コンサルティングファームの価値は、データ分析を超えたところにある

顧客がデータを入手し分析しやくすくなったことで、これまでコンサルティングファームに依頼していたことを見直し、社内で解決する動きもあると思います。

 まず、確かにデータの質やデータの透明性は増し、以前に比べ誰もがアクセスできる量は増えています。それは大事な要素だと思いますが、一番に考えるべきは、データそのものではなく、それを使って何をするかに価値があるということです。

 つまり、データを使って新しいソリューションを考え出して、新しいソリューションを現実に即した形で読み替えて翻訳して、実行するというプロセスが企業側には待っています。データにアクセスできることと、ソリューションを取り出すことの間には、随分とギャップがありますし、現実に物事をやり遂げることとの間には、より一層ギャップがあると思います。

 たとえば、ハーバード・ビジネス・レビュー読者の、性別、子供の有無、職業、年収…すべてをカバーするような完璧なデータがあったとしましょう。しかし、戦略がなければ、データの使いようがありません。「ハーバード・ビジネス・レビューをどうやって1部でも多くの人に買ってもらうか?」を考えるために、まずはいかにデータを使うのかを考えます。その後、実際に拡販するために何をすべきかと、2段階考えなければならないことがあるのです。

 コンサルティングファームの役割と言うのは、今申し上げたすべてのステップにおいて顧客をサポートすることで、いかに情報やデータを集めて解析するかだけではありません。

 新興のコンサルティングファームが非常に良いサービスを提供してくれ、データとして貴重なものを集めてくれることはあるかもしれません。顧客から見れば、データを集める段階までは、いままでよりも広い間口で、様々な選択肢が出てきたと言えるかもしれません。けれども、実際そのデータを読み替えて、翻訳をし、ソリューションをつくり、実行に落とし込むところまでやらなければ、最終的な効果はありません。複数のステップにまたがる領域で、まだまだ私たちがお手伝いできることが多いのではないでしょうか。

伝統的なコンサルティングファームのフィーは高額という印象です。新たなサービスが増え、顧客の選択肢も増えるなか、どのように価値を納得してもらうのでしょう。

 コンサルティングファームが提供しているサービスの単価は、かなり金額がはるというお話ですが、高価なのか安価なのかというのは、生み出している価値次第だと思います。

 何億円、何十億円以上というような価値をコンサルティングのプロジェクトの結果生み出すことが出来ていれば、かなり高額であると思われるようなコンサルティング料も、そんなに高いとは思われなくなるでしょう。

 究極的にコンサルティング業界で成功していくための秘訣は、この価値創造にあると思います。価値創造をもう少し噛み砕いて言えば、顧客企業の売上げが上がること、コストが低減すること、収益性が上がること、あるいは時価総額が上がり、シェアが上がっていくこと、さらには組織能力が向上することです。これらの価値が提供できている限り、我々の存在意義は無くなりません。