VCファンドを構成するGPとLPは全く別の動因で活動しており、彼ら個々のニーズを契約で束ねた、取引関係の中にある。ファンドの期間が10年というのも、その契約内容の一つの例と言える。

 それに対して、CVCはファンドの形式をとった場合であっても、LPは親会社であり、GPとLPの関係性はより一体化している。ファンドの形式をとらない場合は、ファンドの期間さえ設定されない場合も多い。そのため、事業会社の資金提供力は通常のVCファンドの場合と比べて、マクロ的な要因に左右される可能性は少ない。むしろ、事業会社自体のキャッシュフローに依存するとは言えるかもしれないが、事業会社の事業規模が十分に大きい場合は、あまり問題にはならない。通常のVC投資がマクロ的に「瀕死の状態」にあっても、CVC投資の蛇口は閉まるとは限らないのだ。

事業会社のニーズの高まり

前回簡単に述べたように、事業会社にとって、いわゆる「オープン・イノベーション」はいまや必須科目になっている。自社の事業の周辺を彩るスタートアップ企業には頑張ってもらわないといけない。

 そのニーズが一番わかりやすい形で見えるのが製薬業界であろう。新薬の開発などは大手の製薬企業にとってもリスクの高いもので、それを自社のリソースだけを使って開発していたのでは、とても間に合わない。創薬ベンチャーなど自社事業に関連する新薬開発を「実験」してくれるスタートアップ企業は彼らにとって不可欠である。

 従来、創薬ベンチャーにも通常のVCの資金が流れていた。それが、バブルの崩壊、金融危機の影響で、バイオ・ベンチャーへのVC資金の流れも限定的になってしまった。それでも、製薬企業は、彼らに不可欠のバイオ・ベンチャーの資金ニーズに応えていかなければならない。その資金ニーズに応じたのが、製薬系のCVCである。製薬系CVCの投資が大きく伸びたのは2009年である。クラッシュベース(CrunchBase)の調べによると、2009年のCVC投資全体の3分の2はバイオセクターが占めていた(ディール件数ベース)。

スタートアップ企業からみたCVCの魅力

 スタートアップ企業の資金ニーズの補完としてのCVCの役割は大きく、VCからの資金提供が期待されない中、起業家サイドはCVCから投資を受け入れるリスクに、ある程度寛容にならざるをえなくなった。