では、創造性についてはどうでしょうか。私の本の中でも触れましたが、創造力の父とも言われるアレックス・オズボーンの唱えたブレーンストーミングの4原則の中には、「批判しない」というルールがあります。ある意味、「出されたアイデアについて議論するな」ということです。しかし興味深いことに、この仮説はほとんど検証されたことがありません。彼が提唱した多くの原則は検証済みですが、この原則に限ってはそうではなかったのです。

 そこで、私が信頼を置く研究者で、カリフォルニア大学バークレー校のシャロン・ノバクが登場します。オズボーンの理論に対し、「それって本当かしら?」と疑問を抱いた彼女は同僚ときわめて興味深いテストを実施しました。まず被験者を3種類のグループに分けます。1つ目のグループには何も指示を与えず、「これからブレストをしてもらいます。さあ、頑張ってください」とだけ伝えました。2つ目のグループには、「けっして相手を批判してはならない」という条件を厳しく守らせました。3つ目のグループには、「自由に議論し、相手を批判して構わない」と伝えました。この実験を、アメリカとフランスという文化の異なる2つの国で行ったところ、基本的には同じ結果が得られたのです。

 2つの文化圏で同じ結果が得られたのは、一般に通用する法則を見出すうえで意義深いことです。結論としては、議論や批判を許されたグループのほうが、それらを禁じられたグループよりも多くのアイデアを出しました。最もアイデアを出せなかったのは、何の指示も与えられなかったグループでした。

 この調査はとても興味深いものです。ただし、これは相手の人格を攻撃せよということではなく、互いのアイデアについて議論して批判せよということです。その点に注意しなければなりません。

グリーン あなたの著書でも、ブレストの「神話」について、かなりのページが割かれていますね。チームよりも個人のほうが創造性を発揮することが多いと指摘されていますが、効果的でないなら、なぜ私たちはいまだにブレストをしているのでしょうか。

トンプソン いくつかの理由が考えられます。1つは、さっきも述べたようにグループやチームの一員になると、人間の基本的な要求の多くが満たされ、よい結果につながるからです。近ごろはニュース番組や組織内でも、「自宅勤務をすべきか、オフィスで働くべきか」という議論が起きていますね。車で通勤し、オフィスで働くことを推奨する人々は、「我々はコミュニティをつくりたいんだ。物理的に他人と一緒にいるとプラスの効果があるから、そのほうがいいじゃないか」と主張します。

 なぜなら、人間は社会的な動物だからです。ただしここで肝心なのは、物理的に同じ場所にいることは、創造的なアイデアを生み出すのに必ずしも最適な環境ではないのです。車の修理をしたり、クロスワードパズルを解いたりする場合には、同じ場所で作業するのが理想的でしょう。それらは問題解決型の課題であり、大きなアイデアを生み出したり、新しいことを考え出したりする課題とは違いますから。

 要するに、両方が大事であることを忘れてはならない、ということです。グループやチームは、やはり多くの活動において必要だと思います。すでにブレストを経て出そろったアイデアを、取捨選択する場合にはチームが非常に有効です。また、人は集団になると結束力が高まるので、いったん決まった方針の下に組織を勢いづけるためには、チームになるのがよいでしょう。

 しかし、ここで私が言いたいのは、個人とチームを取り混ぜて工夫する、という考え方があることです。本の中でも触れた私のお気に入りの研究を紹介しましょう。私の仲間であるテキサス大学アーリントン校のポール・パウルスは、1人で作業をしてからチームで作業をするグループと、チームで作業をしてから1人で作業に取りかかるグループの2つをつくり、創造力を比較しました。すると、両者に大きな差があることがわかったのです。成果が高かったのは、まず1人で作業をこなしてから、チームを組んで作業をしたグループでした。