つまり、「世捨て人」になるか、「パーティー好き」になるかを無理して選ぶ必要はないということです。一番いいのは、まず世捨て人になった後、パーティーに参加することでしょう。
グリーン とても戦術的で役に立ちますね。実用的なヒントについて、もう少し教えてください。私自身の経験もふまえて、本の中で興味をそそられたのは、ブレストではアイデアの質ではなく量を重視するようアドバイスされていることです。その仕組みと、なぜそれが効果的なのかを教えてください。
トンプソン これは非常に逆説的な話です。先ほど、私が支援している大企業の社員たちと、量と質について有益な話をしてきたところなんです。というのも、大半の人々は子どもの頃から「量より質」だと教えられてきたと言うのです。何かをする時には上手にやりなさいと。たしかに、その通りです。
しかし問題は、チームに質を高めよという目標を課すと、慎重になってしまうということです。その結果、人々はいわゆる「自己検閲」を行うようになります。つまり、さまざまなことを認知し、たくさんのアイデアを思いついても、自分が基準を理解しているかどうか不安になり、口に出そうとしないのです。
アレックス・オズボーンの鉄則によると、そのような厄介な基準から解放されれば、人間は誰でもアイデアを生み出せるそうです。したがって、たとえばアイデアを1分に10個出してもらい、質については後から心配したほうが効果的なのです。私はクライアントや学生にいつもこう言っています。「統計的には、10分間に228個のアイデアを出したほうが、たった8つしか出さない場合より、素晴らしいアイデアを見出す確率が高まる」と。
たとえ出されたアイデアのすべてが稚拙で不完全なものでも、それらをいくつか組み合わせたら、素晴らしいアイデアになるかもしれません。
グリーン 面白いですね。「10分」とおっしゃいましたが、そのような短い時間制限を設けるのは役に立つのでしょうか?
トンプソン もちろん。ブレストについての面白い調査結果によると、グループでアイデアを出す場合、制限時間の50%が経過する間に、75%くらいのアイデアが出るそうです。要するに、ブレストに時間をかけすぎなのです。これでは、参加者のやる気は途中で切れてしまいます。
たとえば、私は授業中にブレストをしてもらう場合、制限時間を10分しか与えません。すると、初めのうちは勢いよくアイデアが出ますが、5分ほど経つと、参加者は時計に目をやり始め、教室の活気がなくなっていきます。たった5分でそうなるのです。企業では、会議の時間が10分ということはありませんね。普通は会議に1時間ほど費やすから、アイデアの75%は会議開始から30分、または初めの10分で出尽くすだろうということです。