傍観者を許さない仕組みを作れるか
――しかし、人間はえてして、都合のいい方向に流されてしまうものです。あるいは目の前に厳しい予算目標があれば、協力どころではなくなるかもしれません。好ましい行動が組織の習慣となるには、何か工夫が必要ですね。
それには、協働する人が報われる仕組みをつくることです。あるいは、協働しない人にペナルティが課せられる仕組みも併用すべきかもしれません。イヴ・モリューはこう言っています。
「変革を起こすイニシアティブを取った組織で最も得をするのは誰か。それは参加しない人間である。変革に参加する人は変革が失敗する確率と変革のためのコストを負担するが、変革に参加しない人は成功した場合のリターンだけを手にして、失敗の確率もコストも負担しない。したがって組織を変革しようとしたとき、多くの人が参加しないのは当たり前だ。参加しないことが最も得になることがわかっているから、傍観者になる」
これを打破することが最低条件になります。このときに参考になるのが「貸し借り」についての考え方です。一般的に貸したのに返してくれない人、つまり借りてばかりの人は信頼を失います。ただ、1対1の貸し借りという視点から自由になると、見方は変わってきます。自分には返してくれていなくても、他の人に返していればいい。あるいは次世代に返すという発想でも構いません。貸し借りをわきまえて行動できるようになれば、傍観者の問題は自然に解決できるものです。信頼ベースの協働をするグループには、こうした考え方が成り立ちます。借りっぱなしの人は、やがてグループから淘汰されるからです。
日本人には人を助ける、協力するという文化があります。しかし、それは極めて狭い範囲での助け合いであることが多い。課という狭い範囲では成立していても、企業全体で成立していないところに問題があるのです。自分たちはどのようなグループに属しているのか。常に全体最適が個別最適に優先するように考えることが求められているのだと思います。
※次回は11月6日(木)公開予定。
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