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資本が稀少な時代は終わった
2008年に景気が後退して以降、世界経済の回復の足取りは鈍い。その様子はあたかも、古びた機械が耳障りな音を発するようになり、腕利きの修理工をもってしても原因を究明できないかのようである。アメリカの状況を見ると、不況からの脱却が公式に宣言されてから60カ月が過ぎてもなお、経済は活況を取り戻さず、成長率、雇用とも低調なままである。
金利が歴史的な低水準にあるにもかかわらず、企業が多額のキャッシュを溜め込み、成長に寄与しそうなイノベーションへの投資を怠る、という現象も見受けられる。そこで筆者たちは、以下のように自問した。企業はなぜこのような行動を取っているのか。素晴らしい事業機会が少ないのか、それとも、見過ごされているだけなのか。このような行動パターンは、経済全般の停滞とどう関連しているのか。何が成長を押し止めているのか。
成長理論の大半はマクロ経済の視点、つまり大所高所に立っている。このような視点は、イノベーションと成長の相関関係を見極めるには適している。しかし、成長要因を突き止めるには、企業の内部、そして投資とその管理を担う人々の胸の内を探らなくてはならない。本稿は、クレイトン・クリステンセンが2012年末に『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄稿した論考を下敷きにして、企業の実例を基に成長理論を一から築いていく。