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IBMでの約10年のCEO在任中、サム・パルミサーノは、独自の方法でウォール街とのコミュニケーションを図っていた。わかりにくいといわれたIBMの年間業績見通しの代わりに、パルミサーノが「モデル」と呼ぶ成長のロード・マップを示し、1株当たり利益の引き上げという具体的な目標を掲げた。それとともに四半期ごとに大株主との会議を持ち、議論を重ねた。CEO在任中の経験を振り返り、長期的な視点に立ちながら、投資家を満足させるバランスの取れた経営とは何かについて、パルミサーノが語る。
パルミサーノの10年間
IBMのCEOを務めていた約10年の間、サム・パルミサーノは金融市場について、そして金融市場が意思決定にどのような影響を及ぼしたのかについて、公には多くを語らなかった。公の場では寡黙を貫いたのである。あえて声高に主張しないことを選び、在任期間も終盤になるまでその選択を変えることはなかった。
しかし水面下では、パルミサーノやCFOのマーク・ローリッジ(当時)らがたえず、IBM独自の方法でウォール街を味方につけるための試みを続けていた。その主軸を担ったのは、パルミサーノが「モデル」と呼んでいるもの──すなわち利益を拡大し、キャッシュを生み出すため、数年がかりで見直しを繰り返して完成させたロード・マップである。そのなかでIBMは、1株当たり利益を2006年の6ドルから2010年に10ドルまで引き上げるという目標を打ち出した。そして、この目標達成のために成長とコスト削減の両方を計画するとともに、投資家に対してその過程を評価するよう呼びかけた。さらに、従業員の報酬決定にも「モデル」で定めた指標を採用した。