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強まる短期的成果への圧力
2008年の金融危機で世界的不況が始まって以来、アメリカその他の経済に対して、「四半期資本主義(クォータリー・キャピタリズム)」(四半期ごとの決算を過大に重視し、短期の業績やROIばかりを追いかける経営者や投資家の姿勢を批判する言葉)偏重から距離を置き、真の長期的視点を持つよう方向転換すべきであるとする声は、日増しに高まっている。このテーマは、OECD会合や世界経済フォーラム、G30、その他の国際機関でも繰り返し議題となっている。「共通の価値観」から「持続可能な資本主義」まで多数の解決策が提案され、企業幹部の経営方針や投資方針がそのように変化すれば、どのような社会的メリットが生まれるかが詳細に説明された。
ところが、考え抜かれたこれらフレームワークの普及にもかかわらず、短期主義の暗い影は広がり続けている。そして、状況はむしろ悪化さえしているようなのだ。その結果、企業は長期的視点で投資し価値を築くことがますます困難になり、それが広い範囲で経済成長を阻害し、貯蓄においても投資収益を引き下げている。
最大の元凶は、短期的成果を最大化すべしという、上場企業に対する金融市場からの変わらぬ圧力にあると我々は確信している。この圧力に何とか屈しないでやってきた企業幹部も一部にはいるが、投資家の側からの支援もないまま、自然に皆がそうすると期待するのは非現実的だ。もし市場の主要プレーヤー、とりわけ巨額の投資資産の所有者が加われば現状を大きく打開しうるだろうし、それは彼らの顧客の最大利益につながる話でもあると我々は信じている。本稿では、大規模機関投資家が取りうる現実的な手法をいくつか紹介するが、一握りの主要な機関投資家は、その大半をすでに実践している。