「プロ経営者の時代」最終回。日本でも経営トップを育てることが出来れば、競争力が増す。経営者を育成する方法について整理し、経営教育に欠かせないポイントについて論じていく。

「日本の弱点=経営トップ」の現状を変える

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山根節(やまね・たかし)
早稲田大学政経学部卒業、慶應義塾大学ビジネススクールにてMBA取得、慶應義塾大学商学研究科にて商学博士号取得。監査法人トーマツ、コンサルティング会社(代表)、慶應義塾大学ビジネススクール、米国スタンフォード大学(客員研究員)を経て2014年4月より現職。専門は会計管理論、経営戦略論、マネジメント・コントロール論。主な著書に『山根教授のアバウトだけどリアルな会計ゼミ』(中央経済社) 『なぜ、あの会社は儲かるのか? 』早稲田大学・山田英夫教授との共著(日経ビジネス人文庫)『新版ビジネス・アカウンティング—財務諸表との格闘のすすめ』(中央経済社)

 私がビジネススクールで教授職に携わってから20年経った。ビジネススクールに奉職する前は、20年間実務家として仕事をした(そのうち2年間はビジネススクールで勉強し、その後13年間、自ら設立した企業のトップを務めた)。したがって私は実務家と教育者を半々20年ずつこなしたことになる。

 40年経って、経営教育について自分なりに見えたものがある。それは次のようなことである。

・ 良い経営者がいれば、日本は世界で勝てる

・ しかし「日本の弱点は経営トップ」にある

・ 経営は座学で学ぶことができる。つまり経営者は育成できる

・ 今の日本企業に足りないのは経営教育である

・ したがって経営教育に本気になれば、日本は勝てる!

 この連載の第1回で「日本の社長は“代表取締役担当者”」という話をした。またドラッカーの「日本企業の弱点は経営トップにある」という言葉も紹介した。なぜこのようなことが起こるのか。その理由は、日本の中間管理職層が経営を勉強する機会を与えられなかったからである、と私は考えている。日本のミドルは優秀である。必要な知識を勉強すれば、容易に吸収する。日本のビジネスパーソンたちは入社以降、営業に配属された人たちは営業に必要な知識を学び、技術職に配置された人は技術を学んできたはずである。人事部門や財務部門、情報システム部門ではそれぞれ必要な知識を学び、それを仕事に生かしてきたはずである。本を読み、セミナーに通い、実践で試し、成長してきたはずである。

 であるならば、経営も勉強すればいい。少なくとも経営者予備軍の人達は、座学で経営を勉強すればいいのである。日本に足りないのは、専門教育ではなく経営教育なのだ。