典型的な例として、管理職を一人採用すると、周囲の誰かを十分に忙しくさせるくらい仕事を生み出すことになる。特に職位の高い人材ほどそのコストは大きい。高職位の人材はアシスタントや主任スタッフを必要とすることが多い。さらに、サポートスタッフも他人の仕事を増やす傾向にある。これら全てを合計すると、本人分も含めて約4.2人工に値するのだ。
我々は、このような泥沼から抜け出すための3つのステップを発見した。
(1)間接人員比率を綿密にコントロールする
適切な水準は業界によって様々だが、競合ベンチマークに対する自社の水準を測定し、必要であれば調整すべきだ。現場社員からの意見やアイデアをもらえるようにプロセスを設計できれば、より早く適切な意思決定ができるだろう。場合によっては、全サポートスタッフが必要ではないことに気づくかもしれない。そうすれば、より少数の人で効果的に働くことができるようになるだろう。
(2)管理職階層を減らす
管理職一人が直接管理している平均部下数と自分の管理人数を同業の競合と比較し、必要に応じて調整する。しかし、職種により管理人数が異なることに注意が必要だ。例えば、法務部の法律担当者であれば、細かい指導が必要となる専門的な仕事なので管理人数は必然的に少なくなるだろう。一方、会社の清掃人員を担当する管理職であれば、一人で多くの人数を管理することも可能だろう。
(3)一緒に働くサポートスタッフの人数を制限する
管理職を削減して、残された人が忙しくなる、もしくは非効率な働き方になるのであれば、減らす意味がなくなる。シニア管理職人材にはアシスタントだけでなく仕事を手伝うメンバーがいて、主任メンバーと一緒に仕事するのが当たり前になっている会社もある。そのサポートスタッフ全員で、シニア管理職自身と同じくらいの仕事をすることになる、まさにこれが乗数効果だ。だからこそ、一緒に働くサポートスタッフの人数を制限(場合によっては削減)することで、仕事量とコストを減らすことができるのだ。
このような組織の課題解決に取り組み始めた企業もある。私が最近仕事をしたある大規模なソフトウェア会社は、管理職を4割以上も減らし、実際に製品開発を担当する人たちの負担を減らすことができた。アラン・ムラーリーはフォードのCEOに就任した時、CEO担当主任スタッフのポジションをなくした。彼の方針には二つの意味があり、そもそも主任スタッフが必要ないということだけでなく、彼の元にまったく担当スタッフを置かないという点だ。この決定は組織内で同様の動きを後押しし、誰も主任スタッフを持ちたがらなくなった。
パフォーマンスの高い人たちは、自らの潜在能力を遺憾なく発揮したいと考えているため、このような方法が有効となりうる。組織内の障害でもって、それを邪魔してはならない。
HBR.org原文:The True Cost of Hiring Yet Another Manager, June 2, 2014