神田 ここからは、個人的な目標を達成するために必要な交渉術について、具体的な例を挙げながらお話いただけますか。
ダイアモンド では、息子を例に挙げましょう。私にはアレクサンダーという12才の息子がいます。彼は4才の時にピアノを習い始めました。ピアノは好きでしたが、熱心とは言えなかった。

そこでどうしたか。私は彼に「ピアノを弾く時間と同じ時間数だけ、大好きなテレビアニメを見ていいよ」と言ったのです。
すると、息子はテレビアニメを見るためにピアノを弾き始めました。彼は“順調”にアニメを見続け、なんと習い始めから4年経った8才の時にカーネギーホールで演奏するに至り、アメリカ国内のピアノコンテストで優勝までしてしまったのです。いまはアニメを卒業しましたが、ピアノは引き続けています。
ここで鍵となるのは「取引」です。私は息子との取引に成功したと言えるでしょう。これは双方にとって有益で継続可能な取引でした。
99.9%の値引きに成功したグーグルの交渉術
ダイアモンド もう一つ例を挙げましょう。グーグルで指導したあるスタッフが、6万ドルから6000ドルという99.9%のインスタレーション費用の値引きに成功しました。彼がクライアントに送ったビジネス文書がそれを引き起こしたのです。このとき、相手が何を求めているのかを知ることが、取引を成功させる手助けとなりました。
ここで何が言いたいかと言うと、いままで交渉に重要と思われてきた相手との力関係や論理は、実はあまり関係ないということです。それよりも、相手が思い描いていることや、彼らの感情や見識を探って知ることに価値があり、それが多くの取引を生むのです。
もし、私があなたの見識を理解するところから交渉に臨んでいれば、よりスムーズにあなたを説得できるし、その見識に私が価値を見出していたなら、取引は成功するはずです。
これは、いままでとはまったく異なるアプローチですね。現在知られているほとんどの交渉術は、70年代の研究結果を基にしています。つまり40年前のものなのです。
次回更新は12月25日(木)を予定
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『ウォートン流 人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術』(スチュアート・ダイアモンド 著、櫻井祐子 訳)
ビジネスでは、商談、待遇の改善要求、抗議など、「交渉」がすべてといっても過言ではない。一方、私たちの普段の生活もまた交渉の連続だ。配偶者と家事を分担したい、レストランの料理が遅い、交通違反で警官に止められた、といった場面も、実は「交渉しだい」なのである。そして、驚くべきことに、国際紛争を解決に導くのにも、子どもに歯みがきをさせるのにも、まったく同じ交渉術が役に立つ。しかも、その交渉術は誰でも学べるもの、今すぐ実践できるものなのである。世界中の企業や国家のトップが教えを請う「交渉術の権威」が、その極意を伝授。
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