――現在、大規模な設備がなくても製品を作れるようになりました。小規模メーカーと大規模メーカーは共存するのでしょうか。もしくは集約されるのでしょうか。
これは両極になっていくと思います。これからは少量かつカスタマイズされた商品の生産も必要になってくるでしょう。3Dプリンターの出現は、おそらくこの動きをサポートしてくれると思います。一方で、依然として大量生産も必要とされます。
かつては「規模の経済」が働くとコストが下がると考えられてきました。これは間違いなく今後も存在し続けます。しかし、今はその逆もあることが認識されています。これまでは、少量生産は経済効率が低いと考えられていました。しかし3Dプリンターなどの出現により、コストが低減しています。少量生産を低コストで実現できるのであれば、規模が必要なくなるということです。
もうひとつ加えなければならないのは、ロボットを使った自動化です。かつては、工場の自動化は大企業しかできず、小さな企業にはとても無理だと思われていました。しかし、今は2万5千ドルでロボットが買える時代になっています。設置の時間もそれほどかからないので、資金調達から稼動までのリードタイムも圧縮されています。
これからはさまざまな生産方式が林立し、ひとつに収斂することはありません。一口に製造といってもひとつの解があるわけではなく、企業がどのような選択をするかがポイントです。ひとつの企業が複数の生産方式を併用することもあるでしょう。テクノロジーを熟知していれば、選択肢を増やすことができ、正しい選択肢を選ぶチャンスに恵まれることになります。すべてのカギは「柔軟性」「迅速性」なのです。
ただ、選択肢が増えることによって、間違った生産方式を間違った製造拠点に置いてしまうリスクも同時に増えます。規模が大きくなればなるほど容易に撤退できないので、意思決定には慎重さが求められます。ただ、ビクビクしなさいと言っているのではありません。慎重さと勇猛果敢さをもって、時には思いきった判断を下さなければならないと思います。