日本企業も、この流れと無縁ではいられません。慎重かつ勇猛果敢な意思決定ができるかどうかではなく、やらなければ生き残れません。ビジネスは「誰がスマートなアイデアやソリューションを生み出すか」という競争です。ことここに至っては、場所や風土や文化は関係ありません。
これを生み出せるのはアントレプレナーかもしれません。大企業の開発部門かもしれません。あるいは地方の零細企業かもしれません。それが誰であっても、先にやった者が勝つのがビジネスです。しかも、スピードも求められます。これは説明するまでもありません。アメリカはどちらかというと、少しおっちょこちょいなぐらい早く対応し、それが失敗を招くこともあります。しかし日本はその逆で、ゆっくり動き過ぎています。だから機会を失い、競争に敗れていくのです。
新たな変化に製造業はいかに向き合うか
――インターネット・オブ・シングス(IoT)が日本でも注目を集めています。IoTは製造業にどのような影響を与えるでしょうか。
多くのインパクトを与えるでしょう。おそらく、製造業という概念を大きく拡張してくれるのがIoTだと考えています。
製造業というと、生産設備という「箱モノ」を考えてしまうものです。サービスやカスタマイゼーションはイメージされません。しかし、IoTは顧客に対して多くの価値を提供するはずです。たとえば工作機械を考えると、これまでは故障してからはじめて部品を替えていました。IoTが進むと、部品がまもなく寿命を迎える、まもなく故障が発生するということが事前にわかります。事前に察知できれば、稼働中の生産ラインを止める必要がなくなり、生産効率が上がっていくはずです。
ただし、コントロールをソフトウエアがやってくれるようになると、より複雑性が増すことになります。ハードウエアがあり、別のハードウエアがあり、それをつなげるソフトウエアがある。そのソフトウエアがすべてを統合し、状態を管理する。いわゆるオペレーションシステムが運営管理を行う時代に入ると、現在の複雑性にさらなる複雑性が加わることになります。複雑性が増せば、変化についていけるものは勝ち組として生き残り、ついていけない企業は残念ながら淘汰されていくでしょう。ここで必要になるのは「6つのシンプル・ルール」(注)です。よりシンプルな仕組みにすることで競争優位を手にすることができ、グローバルでの競争に生き残ることができるのです。
【注】6つのシンプル・ルールについては
「組織の生産性と創造性は『6つのシンプル・ルール』で高められる」を参照。