しかし、フィリップスとセールスフォースの2社で、病院に対しこのプラットフォームを導入するよう説得できるだろうか。このシステムが信頼でき実際にコスト削減につながることを、病院側はどうやって確かめればよいのか。ここで出番となるのが、オランダのラドバウド大学メディカルセンターとフィリップスの提携だ。両者はデジタル・ヘルススイート・プラットフォーム向けに患者のデータを収集できる、ウェアラブルを含む新たな機器の開発と試験にあたっていた。それらをラドバウドの患者に試用し、フィリップスは他の病院での使用に向けたビジネスケースを作成した。

 ウェアラブル機器の製造、アプリの開発、患者データの分析という過程を通じて3者が培った貴重なノウハウは、今後プラットフォームに参加して独自のアプリや機器をつくりたいという新たなパートナーと共有できる。

 このイノベーションが実を結んだのは、フィリップスが提携を管理した手法によるところが大きい。同社は少人数の専門家で構成される「提携管理室」を創設し、提携案件に関わる幹部たちを支援している。この管理室はセールスフォースおよびラドバウド大学メディカルセンターとの提携を進める際に、契約交渉を支援し、KPI(重要業績評価指標)についての合意を取り付け、提携の進展に関するパートナーの見解を評価するツールを開発した。また、定期的に連絡会議を主催し、セールスフォースを担当する幹部たちと、ラドバウドを担当する幹部たちが互いの提携状況を把握できるようにした。このような努力も手伝い、3者のパートナーシップは数十億ドル規模の事業機会を築いている。

 この事例から、他の企業は2つの教訓を得ることができる。第1に、提携をネットワークと見なし、それを推進力としてもっと活用すること。第2に、このネットワークを管理するチームを社内に設け、特に複数の提携で知識やリソースが共通する場合に調整すること。顧客やサプライヤー、時にはライバル企業とでさえ、協働は計り知れない可能性を秘めている。


HBR.ORG原文:A Better Way to Manage Corporate Alliances December 2, 2014

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アンドリュー・シピロフ(Andrew Shipilov)
INSEAD准教授。戦略を担当。共著にNetwork Advantage: How to Unlock Value from Your Alliances and Partnershipsがある。