クリエイター、職人にフォーカスした店づくりを提案する
中野里:それは、僕も考えています。まだ形に出来ているわけではないんですが、横綱がいて、大関・関脇・小結と、職人のレベルを分けたりとかは考えたことがあります。

(こすぎ・こういち)
SUZUKI「HUSTLER」、資生堂「50 selfies of Lady Gaga」、KIRIN「一番搾り 」、PARCO「パルコアラ」、ZUCCa、特別展「ガウディ×井上雄彦」アートディレクション、Gaba、東京国際映画祭2013年アートディレクション、本屋「B&B」などがある。東京ADC賞、JAGDA新人賞、NYADC賞、カンヌ国際広告祭<DESIGN部門>GOLD、ACC賞、ADFEST グランプリ、JRポスターグランプリ最優秀賞、ギャラクシー賞、インタラクティブデザインアワード、Spikes Asiaなど国内外数多く受賞。
小杉:お店には家族連れも多いと思うので、子どもに向けたエンターテイメントとして「横綱握り」とかあったら面白いですよ。
中野里:確かに、各店には横綱級の板前が一人はいて、彼らが作る刺盛りはすごいぞと、テーブルにドンと1台置くとお客さんが「ワーッ」と感動するものは出していますね。
あとは、横綱レベルでなくても手先の器用な板前が結構いて、ちっちゃいお寿司を作って子どもに出すとすごく喜ばれるんですね。それはもう、臨機応変にやってはいます。
小杉:それは喜ばれそうですね。いまふと思ったのですが、魚介のネタが記事だとしたら、お店作りって編集の場じゃないかなって思うんですよね。玉寿司の職人らしい編集の仕方がお客さんからも分かると、他の店との差別化ができると思うんです。
その時に、寿司に関わっている人が当たり前だと思っていることが、消費者にとっては魅力的に聞こえることもあるかもしれません。昔、工場の写真集作りに携わったことがあるんです。オイルまみれの手とか、ボルト1個のアップがすごくカッコ良かったりするんですけど、工場の人は「なんでそんなのがいいの?」と。
例えばですが、職人が寿司を握る手つきが、一本握りとか、日本指とか、ちょっとした技の名前があったりして。
中野里:仏壇返しとかね。
小杉:そんなのがあるんですか。
中野里:あるんです。
小杉:そういうものを店内に飾ってあるだけでも、「職人さんってこんなに技がいっぱいあるんだ」「あっ、今の仏壇返しじゃない?」という接点にもつながるのかな、と思ったんです。
中野里:なるほどね。そこまで職人に思いっきりフォーカスしたお店作りっていうのは…(沈黙3秒)そういう方向では掘り下げてなかったな。まぁ、うちの板前らしい店を作るというのは心がけては来たんですけど(沈黙2秒)うーん。
小杉:職人の技を見せるというよりは、職人が何にこだわっているかを切り出して行くというイメージです。僕、すごい野球が好きなんですけど、もちろん選手を見るというのもありますが、野球のルールとか、その人が使っているバットってどこのかなとか、そういうところも面白くなってくるじゃないですか。そういう職人さんへの興味の入り口を広げる施策もあるのかなと思ったんです。
中野里:そうですね、例えば包丁にどんな種類があるのか、どうやって研いでいるのかとか、色々あるとは思うのですが、どうなんだろう(沈黙2秒)それが多くの客様にとって魅力に映るかっていうと…。
実は、うちのホームページに「玉寿司のこだわり」というコーナーがあります。それがものすごい貧弱なんです。これが悩みの一つで、社内では早く何とかしようよと言っているんですが、結局は経営者が率先して作って行かないとだめなんですよね。
※次回は4月17日(金)公開予定。
【連載バックナンバー】
第1回「クリエイターは経営者の課題を引き出せるか」