市場のグローバル化:
新興市場の急成長に直面して、日本市場とも異なり、また各地域の市場ごとにも異なる競争環境や顧客ニーズに対応できるよう全社的な改革を推進しなければならない。
ビジネス・モデルの革新:
単品モノ売りから、複数商品を組み合わせ、サービスも加味した「ソリューション提供型ビジネス」への転換が必要となり、それに対応できる体制を構築せねばならない。
対顧客アプローチの強化:
従来の御用聞きスタイルが行き詰まり、顧客の先取りをしたり、顧客をリードしたり、顧客と一緒に考えたりなど、いわば「コンサルティング的機能」の強化を、様々な事業部門で同時並行的に推進せねばならない。
組織の進化:
地域・事業・機能のマトリクス組織化がグローバル規模で進んだり、M&Aを展開したりして、組織が増殖しかつ複雑化している。その中で、組織能力の共有化や横通しによる「総合力」の形成などを通じて、部分最適ではなく全体最適を強力に推進せねばならない。
組織戦への転換:
様々な部門で、経験に基づく職人的・個人商店的営業活動から、より標準化された「売れる仕組み」作りへと、戦い方を転換せねばならない。
要するに、多くの企業がグローバル・メガ競争の中で、従来のビジネス・モデル、顧客へのアプローチ方法、組織の体制や運営の仕方などの様々な面で、企業グループ全体を作り変えるような大きな変革運動に直面しているということであろう。当然これらは経営者にとって最大課題の一つであり、その一人の推進役としてCMO設置が進んでいると見られる。またこうした要因はB2B、B2Cを問わず多くの企業に共通するものとも言えよう。
マーケティングCEOスペクトラム
マーケティングがそれほど経営上重要な活動だとすれば、企業経営者自らも相当のエネルギー、つまり自分自身の意識と時間をマーケティング活動に投入しているはずだが、実際はどうなのだろうか。
マーケティング活動への経営者の投入時間に関する研究はほとんどない。そこで、内外の著名経営者約30名を選び、その自伝や伝記などの分析を通じて、経営者のマーケティング関与度合いに関する仮説の構築を試みた。対象とした経営者は、例えば、ホンダの本田宗一郎、ソニーの盛田昭夫、ウォルト・ディズニー、ヤマト運輸の小倉昌男、GEのジャック・ウェルチなど経営史上のスター経営者たちや、京セラの稲盛和夫、セブン&アイの鈴木敏文、ソフトバンクの孫正義、ユニクロの柳井正、サムスンのイ・ゴンヒ(李健煕)、日産・ルノーのカルロス・ゴーン、アリババのジャック・マーなど現役スター経営者たちである(以下敬称略)。比較的信頼できる評伝や自伝が入手できること、経営者の仕事のやり方の具体的記述があることなどを選定の条件とした。