なおここでいうマーケティング活動とは、「企業および他の組織が、グローバルな視野に立ち、一般消費者、取引先、関係する機関・個人および地域住民を含む顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的な活動、すなわち組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに関わる諸活動」という日本マーケティング協会の定義に基づいている。もちろんこれには企業や製品などのブランディング活動なども含まれる。

 この分析の結果から出てきた仮説の一つが、「マーケティングCEOスペクトラム」である(図1参照)。経営者自身が実際どの程度マーケティング活動へ関与しているか、すなわち「マーケティングCEO度」とでも言えるものを、一つの軸上にプロットしようと試みるものである。このスペクトラムで左に行けばいくほど、経営者のマーケティング活動への直接関与度は高い。逆に、右に行けばいくほど、直接関与は小さい。

 一番左側、マーケティングにどっぷりと深く関わっているCEOを「ザ・マーケティングCEO」と仮に呼ぼう。逆に、一番右端のCEOは、「マーケティング・ミニマリスト」と呼びたい。ミニマリストとは、必要最小限度しか関わらないという意味だ。そして、その中間に「マーケティング・アクティビスト」と呼んでいいような一群のCEOが存在する。アクティビストとは、積極的活動家という意味で、マーケティング活動に選択的にかつ積極的に関わる人たちである。このスペクトラム上に、今回調査した経営者の一部を試みにプロットしてみよう。その位置は、もちろん客観的な指標に基づく定量的なものではなく、経営者間の相対的・定性的な位置のイメージである。

 

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図1:マーケティングCEOスペクトラムと経営者の例

 これだけの例からも分かるように、マーケティングCEO度は、企業あるいは経営者によって大きくばらついている。いずれも成功企業の経営者たちであるから、必ずしも、ザ・マーケティングCEOだから良いとか、あるいはミニマリストだから悪いとか、という評価はこれだけから下せるものでもない。ただ全体として、ここ取り上げたスター経営者たちのマーケティングCEO度は比較的高めという印象である。