デザインと言えば、サムスンのイ・ゴンヒ会長も、デザインの重要性を認識し、それに深く関わった経営者と言われている。デザインの重要性は、すでにイ会長が1993年に発表した「新経営」の中でも謳われている。さらに、彼は2005年イタリア・ミラノで世界サムスン・デザイン戦略会議を主宰し、そこで「サムスンのデザインは、一部を除けばすべて1.5流だ。いまや経営の中心は品質ではなく、デザインだ」と檄を飛ばしている。さらに、「デザインとはただ格好ばかりの形にとどまらず、サムスンマンの魂を込めねばならない」と述べ、サムスン製品のデザイン面での革新運動をリードしている。実際、この後のサムスンのブランドとデザインの刷新は目を見張るものがある。

 こうして見ると、経営者は、マーケティングの全分野に万遍なく介入するわけではなく、時々の経営の優先順位に応じて、どの分野に介入するか、どう介入するか、自らが選択・決定していたようである。その目利きと見極めも経営者の力量と言えるだろう。

時期によりタイプを使い分けるCEO

 これまで紹介した経営者たちのマーケティングへの関わり方は、経営者在任期間を通じて、あまり大きな変化はないようである。例えば、S・ジョブズ氏は、アップル以外の企業の経営にも関わったが、どこでも同じようにマーケティングに深く関わっている。小倉氏も、ヤマト運輸退任後、福祉のベーカリーの経営をボランティアで支援していたが、そこでも深くマーケティングに関与している。現役の鈴木氏、柳井氏、ゴーン氏は言うに及ばない。これはおそらくそれぞれの経営者の基本的な経営スタイルであり、置かれた状況に関わらず、マーケティングも含めた様々な活動に同じように対処している、ということなのかもしれない。

 これに対して、長い経営者経歴の中で、関わり方を時期によって変えてきているように見受けられる経営者もいる。例えば、京セラの名誉会長であり、盛和塾塾長でもある稲盛和夫氏である。同氏に関する経営書は最近汗牛充棟の感があるが、通して読んでみると、京セラ→KDDI→日本航空という約半世紀に及ぶ長い経営者キャリアにおいて、そのマーケティングへの関わりは、それぞれ異なっているように思われる。