生活者はいまや、マス媒体のみならず多様なコンテンツを取捨選択し、楽しんでいる。そのキーワードが「エンゲージメント」だ。日本でも1カ月の再生回数が1億回突破する現役大学生 YouTuber「はじめしゃちょー」などが高いエンゲージメントを獲得している。そしてそれは、マスメディアでも不可能なことではない。グーグルのマーケティングチームの好評連載、第5回。

 

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長谷川 泰(はせがわ・たい)
グーグル株式会社 プロダクト マーケティング マネージャー。南カリフォルニア大学 映画テレビ学部 制作科 卒業後、総合電機メーカーに入社、インターネット及びエンターテイメント関連事業の企画と事業化に従事した後、コロンビア大学にて経営学修士号を取得。2008 年グーグル株式会社に入社以来、動画共有サイト YouTube の日本におけるマーケティングを担当。

 生活者が、飛躍的に増えた情報量の中から、「何を見るか」、「いつ見るか」、「どこで見るか」を主体的に選ぶようになったことにより、情報収集・選択の主導権は、マスメディア等の従来の発信者から、生活者に移りつつある。また、ソーシャルメディアやコンテンツ共有サイトなどを通じて生活者が他の生活者に情報を伝播させるなど、生活者が情報の受け手としてだけではなく、発信者としての影響力を増してきている。この中で、生活者が情報やコンテンツにエンゲージする(強い興味と関心で受け入れた後、その共感とともにより多くの生活者に再発信する)という行動がうまれ、マーケターにとって看過できない変化となっている。

 本稿では、膨大な情報に接触しその中から見るものを選び、自らも発信するようになった生活者たちが、視聴者としてどのようなコンテンツを好み、「エンゲージ」するようになってきているのか、2つの事例とともに考察したい。

視聴者がコンテンツとエンゲージするとは?

 冒頭で述べた、生活者が情報の受け手ではなく、発信者として影響力を増してきている象徴的な例としてあげられるのが、YouTuber (ユーチューバー)の存在である。

 YouTuber は、独自に制作した動画を YouTube上の自身のチャンネルに継続的に公開している人物、またはそのグループを意味し、多くの場合 YouTube 上に表示される広告から収入を得ている。

 成功している YouTuber にグローバルで共通するのは、特定の動画が多く視聴されているだけではなく、フォローして継続視聴する「チャンネル登録者」、動画へのコメントや高評価、SNS などでの動画の共有が多いなど、高いエンゲージメントを獲得していることだ。

 YouTuber が発信するコンテンツについて、YouTube によるプロモーション企画「好きなことで、生きていく」に参加する人気クリエイター「はじめしゃちょー」を例に解説する。