はたして高度なマネジメント業務は自動化できるのか?〈iCEO〉の実験では、事前に作業工程をプログラミングするだけで、作業者の雇用から品質保証まで全行程で人間の管理者が不要だった。テクノロジーによる破壊は、上級管理職の仕事や職にも及んでいくようだ。

 

 フォーチュン500企業の幹部たちは、オートメーションとインターネットが雇用のあり方をどう変えるかについて、かなりの時間を費やして思考を巡らせている。だが、もっと身近なこと――テクノロジーが幹部自身の仕事や職に及ぼす影響については、ほとんど考えない。

 シリコンバレーの非営利研究機関、インスティテュート・フォー・ザ・フューチャーに所属する我々のチームはここ数年にわたり、未来の労働を形づくる現在の要因について研究し、「高度なマネジメント業務は自動化できるのか」というテーマを探求してきた。取り組みの一環として、〈iCEO〉という仮称のソフトウェアを試作した。名が示す通り、これは複雑な仕事を自動化する仮想マネジメントシステムだ。

 iCEOはまず、仕事全体を個々のタスクに細分化し、それらの小タスクを作業者たちに委託する。その際には複数のクラウドソーシングのプラットフォーム、およびメールやテキストメッセージを用いる。つまり基本的に、コンピュータの画面上でドラッグ・アンド・ドロップ操作で「仮想生産ライン」を立ち上げ、運営もできるというシステムだ。

 iCEOは我が研究所の実際のプロジェクトを管理できるだろうか。数回の運用テストを経て、その答えを探る用意が整った。課題の1つとして、ある一流のクライアント(フォーチュン50企業)に向けた124ページの調査報告書の作成を管理するよう、iCEOをプログラムした。数時間かけてプロジェクトのパラメータ(作業工程などを含む)を組み込み、稼働を開始した。

 与えられた課題は、グラフェン(炭素シート)の製造方法に関する綿密な評価報告書の作成だ。iCEOはまず、アマゾンのメカニカルタークの作業者に関連文献の調査・選定を依頼した。そして内容の重複が除外された文献の一覧がoDesk(オーデスク)の技術アナリストたちに引き渡され、重要な知見の抽出と整理が行われた。次に、Elance(イーランス)のライター集団がこれらのデータを整合性のある文章にし、さらに当該分野の専門家たちが内容を検証。その後oDeskの編集者、校正者、ファクトチェッカーへと順に回された。