iCEOは一連のタスクを、世界各地の23人の作業者に手配した。タスクは60点の画像とグラフの作成、および報告書のレイアウト・構成と作成を含む。我々は監督者として、iCEOがこのプロジェクトを実行する様子を見守っていただけである。介入の必要はほとんどなかった。提出された各構成部分の品質チェックもせず、スタッフの雇用に時間を割くことさえも不要だった。品質保証と採用もiCEOで自動化されていたからだ(たとえば、oDeskの作業者を本件で雇うこと自体、oDeskに委託した)。
最終成果物の出来栄え、そして作成の速さに我々は驚嘆した。このような報告書は通常、文献調査だけでも数週間かかるが、iCEOが要したのはたった3日であった。そして報告書全体の作成は、従来型の管理職と従業員の体制であれば数カ月を要すると思われるが、iCEOはわずか数週間で終えることができた。
この成果を別の言い方で表してみよう。我々の問いはこうだった――「プロジェクトマネジャーを務める人間がいなくても、座ったままノートPCを開いてiCEOを立ち上げ、作業工程をプログラミングし、フォーチュン50企業にふさわしい成果物を完成させることは可能だろうか?」。少々意外ではあったが、その答えはイエスである。
このソフトウェアは、さまざまな業界での利用が想定できる。我々は販売、品質保証、人材雇用などの業務で試験運用したが、他の適用例も数限りなく考えられる。iCEOはメカニカルタークを活用できるほどの高性能を備えているが、小規模作業を請け負うこのアマゾンのプラットフォームはすでにさまざまな業界の企業が利用している。
iCEOがまだ初歩的なプログラムであるのは確かだ。多様な企業に対応できる本格的な法人向けソフトとしてリリースするには、あと1~2年かかるだろう(非営利研究機関である我々は、進化するこの技術をどう活用すべきか熟慮を重ねている最中である)。しかし、必要に応じて調整・拡張が可能な「マネジメントのレシピ」が実地試験を経ていまここに存在するという事実は、非常に画期的なことだ。
オートメーションにまつわる論争では、「マネジメントの仕事には相応の創造性が必要なので、すぐに自動化されるようなことはない」という声もある。産業革命の黎明期には、熟練工による細かい職人技について同様の議論が交わされた。しかし、作業工程を分解することによって職人仕事の自動化がたちまち可能となった。50年も経つと、組み立てラインが世界を一新した。