●「引退できないのでは」という不安感は、言われているほど蔓延していない
欧米でしばしば言及されるこの説は、我々のデータでは裏づけられなかった。特にアジア太平洋では、58%が60歳までに引退できると予想していた(中国はもっと多く62%。日本は他のアジア諸国より低く33%で、61~65歳が最も多く39%)。引退年齢の予想が最も高かったのは中欧・東欧で、27%以上が70歳以降とした。
データに多くの意味を求めすぎないよう、注意する必要もある。たとえば、引退年齢の予想が平均よりも高い地域(欧州全体と北米)のミレニアル世代は、他地域よりも将来に経済的な不安を感じている、と捉えるのは必ずしも正しくない。単に、老いても健康でいられる自信が他地域より強いという可能性もある。ただし、引退年齢の予想が低い地域(アジア太平洋)については、それを可能にする経済的な自信が表れていると言えそうだ。
また、「親の世代よりも高い生活水準を享受できそうか」という問いについては、中欧・東欧、アフリカ、アジア、中南米では肯定する回答者が多かった。アジア太平洋のミレニアル世代は総じて、経済的に安定した将来を見込んでいるが、オーストラリアは例外のようである(生活水準の問いに関しては、日本がアジア太平洋で最も悲観的)。楽観の度合いは、各国で彼らが生後経験してきた経済成長度と相関しているように思われる。
ミレニアル世代は引退にまつわる不安は感じていなくても、好きではない仕事ややりがいのない仕事を続けることは恐れている。仕事に関連する不安について尋ねたところ、上位3つに挙げられたのは、「成長の機会がないままでいること」、「キャリアの目標が達成できないこと」、「自分の性格に合った仕事を見つけられないこと」であった。
地域特有の不安、つまり他とは大きく異なる回答傾向も見られた。たとえばアフリカでは、「自分の民族的背景が理由で、正当なチャンスを得られない」可能性を心配する割合が多かった(22%)。これは他の地域ではもっと低い(北米は12%、中南米は2%、中欧・東欧は1%)。北米で多くの票を集めた不安は「働きすぎること」、中南米では「自分は能力不足かもしれない」、中欧・東欧では「自分は組織にとって価値がないかもしれない」であった。
ミレニアル世代のリーダーを獲得、維持、育成するために、企業とマネジャーはこうした地域差を考慮に入れる必要がある。ブラジル、シンガポール、米国それぞれのミレニアル世代が重視することは、それぞれ異なるのだ。もっとも、特定の文化圏で重視されていることを理解するのは重要であるが、その中でも人によって大きな違いがあることも留意すべきである。ミレニアル世代について万国共通で言えることが1つあるとすれば、それは彼らが個人として見られることを望んでいるということだ。
HBR.ORG原文:What Millennials Want from Work, Charted Across the World February 23, 2015
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ヘンリック・ブレスマン(Henrik Bresman)
INSEADの准教授。組織行動論を担当。シンガポールを拠点とする教育分野のシンクタンク、ヘッド財団のアカデミック・ディレクターも務める。