2.Invite users - ストーリーを通してブランドとの一体感をつくる
ブランドが発信するストーリーに共感し、実際にそのプロダクトに興味を持ち、試してもらうだけでは、一時的な関係は構築できても、ブランドと生活者の強固な絆は生まれない。世の中に溢れるブランドの中で、生活者が、自らブランドの積極的なファンとなり、ブランドの強い支持者となるために、その先に何が必要か?
グーグルでは、提案したストーリーを通じて、プロダクトの奥にある価値に共感し、自ら発信する側にもなってもらう、言い換えると、プロダクトのユーザーから積極的にブランドの Advocater (賛同者)となってもらうことが、その鍵の1つだと考えている。この目的意識とアクションが“Invite users”である。
この一例として、“Google さがそう”キャンペーンを見てみよう。
これは、検索という行動に隠された本当の価値を感じてもらうため、「すべての検索には理由」があるというコンセプトをシンプルに描いたTVCM を活用したキャンペーンである。
しかし、当初から、単にTVCMをオンエアすることだけが目的だったわけではない。このキャンペーンでは、「検索ストーリーメーカー」という生活者が実際に自分自身の検索キーワードによって、ストーリー動画を簡単に作成・共有できる仕掛けも用意した。そこでは、1万を超える動画が作成され、もっとも共感された動画は、YouTube上で公開され、作成者の地元である福岡でTVCMとしても放映された。
Chrome ブラウザの Chrome Experiment プロジェクトもその事例としてあげられる。
これは、「ブラウザでできることの限界に挑戦する」というコンセプトのもとにクリエイティブを作成した。ブラウザでユーザが自由に入力したメッセージを、OK Go のバンドメンバーが ”All is Not Lost”の曲にのってダンスをしながら、そのメッセージを表現する。メッセージを届けたい人に送信することも、「グローバルギャラリー」で公開することも可能だ。日本だけでなく世界中の人に利用され、各地から思い思いのメッセージが共有されている。
また、YouTubeのマーケティングキャンペーンでは、”好きなことで生きていく”というメセージのもと、好きな動画制作を仕事にもしているYouTuberたちの努力や苦労と、共有することの楽しさや情熱を表現した。これは生活者の共感を呼び、その動画フォーマットを真似て自分自身を主人公に置き換えた動画が数多く自主的に作られ、共有を促した事例となった。
生活者が、実際にブランドのストーリーを通じプロダクトの価値に共感し、それを自分のストーリーにして伝えていく。マーケティングコミュニケーションにおいても、生活者がブランドに賛同し、さらにユーザー自らがその感動を発信できる仕掛けを組み上げることが重要である。