インサイトに基づいた施策はなぜ効果的なのか
上述した買物カゴの例では、コンビニにおける平均購入点数が約3個であり、1個か2個しか買わない買物客が半数を占めるといったデータが出発点となっている。このような観測された現象から直接的に施策を考えることも可能だろう。例えば、購入点数を増加させるために、複数商品の同時購買を目的とした関連陳列やバンドル販売(注5)を強化したり、3個以上の商品を購入した顧客に何らかのインセンティブを提供するといった施策も考えられる。こうした、観測された現象(What)から直接的な解決策(How)を考えるという道筋は図表2のように表現できる(注6)。
これに対し上述した事例では、「購入点数が少ない買物客が多い」という現象から「両手で持てる商品数は限られている」というインサイトを見出し、そこから「買物カゴ取得率向上」を目的とした「買物カゴの分散配置」という施策が導かれた。この場合には、その現象(What)がなぜ生じているのかという理由(Why)を洞察し、そこから根本的な解決策を導きだした上で具体的な施策(How)につなげている。このステップは図表3のように表すことができる。
図表2で示されるような、観測された現象から直接的な解決策を導こうという方法は、その現象を観測した企業はすぐに思いつくはずであり、他の企業よりも先にその現象に気付いて対応するという以外に、競争優位を築くことはできない。これに対しインサイトに基づく図表3の方法は、そのインサイトを獲得することが困難であるほど、そこから導かれた施策の優位性が継続することになる。もちろん、買物カゴの分散配置というような施策が店舗で実施されれば多くの競合企業がすぐにそのことに気付くはずだが、その施策が導入された背景が理解されなければ、追随して導入しようということになりにくいと考えられる。