連載第2回の今回は、「観測された消費者の行動や心理がなぜ生じたのかという問いに対する本質的な解」を消費者インサイトであると捉え、その獲得と活用の事例を検討するとともに、インサイトに基づく施策の有効性に関する議論を行った。

 図表2に示した、観測された現象から直接的な解決策を導くという方法は、「頭が痛いから頭痛薬を飲む」というような対症療法に例えることができる。一方で、インサイトに基づく図表3の方法は、「頭痛の原因を明らかにした上で、その原因を治す」という根治療法に例えられる。「観測された現象がなぜ生じているのかという問いに対する本質的な解」をインサイトであると捉えれば、そのインサイトに基づく具体的な施策は根治療法としての継続的な効果を発揮することが期待できる。

 先述した通り、消費者インサイトを獲得するためには、特殊な調査手法を用いなければならないわけではない。消費者の行動や心理の背後にある「なぜ」を掘り下げるという姿勢と視点こそが、効果的なインサイトを取得するための鍵となる。

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(注1)買物客(ショッパー)の行動や心理に関するインサイトのこと。同じ消費者であっても、ユーザーとショッパーという立場の相違によって、その心理や行動が異なってくる場合がある。

(注2)本稿は、守口剛(2014)「マーケティングにおけるインサイトの重要性と有効性――ショッパー・インサイトの活用事例に基づいた考察」『流通情報』Vol.46, No.4.の一部を元に、加筆・修正して作成したものである。

(注3)Point of Salesデータの略。単品ごとの販売数量、販売金額、販売価格などの詳細なデータ。

(注4)流通経済研究所(1996)『流通情報開発共同研究機構CVS分科会資料』財団法人流通経済研究所、守口剛(2014)、前掲書.

(注5)バンドル販売とは、複数の商品を2個でいくら、3個でいくら、というようにまとめて販売することをいう。

(注6)図表2および図表3は、岩崎美紀子(2008)『「知」の方法論: 論文トレーニング』岩波書店、細谷功(2007)『地頭力を鍛える: 問題解決に活かす「フェルミ推定」』東洋経済新報社、を参考に作成した。