メディアでの取り上げられ方が重要

 当然ではあるが、日本と英国では、選挙活動でいくつかの違いがある。
英国では、拡声器を使って選挙カーから大音量で通行人に訴えかけるような活動は行われない。ポスターもあると言えばあるが、交通量の多い場所に掲げられる大型看板が中心で、住宅街で見かけることはあまりない。また、戸別訪問は日本では厳密には違法だが、英国では大事な選挙活動である。

 ただ、活動方法の違いは見られるものの、実際の選挙活動で用いられたメディア(媒体)の種類は日本と比べてそうそう変わるものではない。

 まず、コントロールできないが影響力が大きなものとしては、マスメディアの報道、マスメディアの主催する公開討論会、障がい者協会など特定団体が主催する討論会などがある。次に、みずからコントロールするマス向けのメディアとしては、ウェブサイト、ツイッター、フェイスブック、ユーチューブ動画などのオンラインのツールがある。同様に、みずからコントロールする地上戦のメディアとしては、候補者本人の演説や駅前あいさつ、選挙カー、ビラの街頭配布、ビラのポスティング、戸別訪問、電話、手紙、ポスターなどがあった。

 ご覧いただくとわかるように、活用するメディアのメニューはそれほど変わらない。ただし、それぞれのメディアの持つ意味合いやその重要度については、日本とはやや異なる点もある。

 たとえば、マスメディアが主催する公開討論会は、英国では非常に重要な意味を持つ。主要候補者が全員集まり、司会者が議論全体を取り仕切りながら、候補者同士の議論を戦わせる。その時間は、通常1時間程度である。

 もちろん、このような討論会をテレビで見ている有権者は、非常に限られた割合であろう。しかし、ここでの議論が要約・評価され、それ以降のテレビや新聞、ラジオでニュースとして報道されるため影響力が大きい。

 2010年の総選挙を振り返ると、テレビ中継される党首討論会が3回開かれた。その1回目で非常に高い評価を受けた第3党の自由民主党党首であるニック・クレッグは、終始、選挙戦を有利に進めた。