サントリーのハイボール戦略は
ターゲット軸の調整でも卓越していた
では、ビジネスの世界では、メッセージのテーラーメイドはどのように行われているだろうか。リクルートワークス研究所の『Works』に掲載された野中郁次郎氏の記事[1]によれば、サントリーが仕掛けたハイボール戦略は、この例に当たるであろう。
サントリーはまず、ウイスキーを「熟成感を楽しむ酒」から「食べながら飲む酒」に再定義した。そして「食べながら飲む酒」というメッセージを展開するうえで、それを「居酒屋攻略の地上戦」でテーラーメイドした。
具体的には、「東京・月島ならもんじゃ焼き、広島ならお好み焼きといった具合に、ご当地グルメとの組み合わせを飲食店組合などに提案し、コラボレーションする事例をどんどん増やしていった」のである。つまり、「食べながら飲む」ときに「何を」食べながら飲むのかを、地域に合わせてテーラーメイドしていったのだ。
「メッセージの一貫性」を保ちながら、それをターゲット軸と時間軸で少しずつテーラーメイドしていくことで、さらに「わたくしごと」化の度合いを高め、同じメッセージを繰り返す。そして、みずからコントロールできる媒体だけではなく、コントロールできないマスメディアでもそのメッセージを繰り返し取り上げてもらうために、PR活動を重視する。
これらを徹底していくことで、メッセージの効果が高まるのである。
次回は、本連載の最終回として、選挙全体の情勢推移と結果をまとめつつ、そのエッセンスを抽出する。
[1] http://www.works-i.com/pdf/w106-seikou.pdf
次回更新は、9月25日(金)を予定。