本連載では、米国でDean of Deans(ディーンの中のディーン)と呼ばれたケロッグ経営大学院の名ディーン、ドン・ジェイコブスを紹介するとともに、ケロッグ校の改革の軌跡を追う。最終回は、経営者としてのドン・ジェイコブスの行動を取り上げる(写真:© 2015 H&K Global Connections Inc.)。
エグゼクティブプログラムの財務的なスキーム
エグゼクティブ教育を立ち上げるにあたっては財務的な面でも見事な仕組みを作っている。
仮に、エグゼクティブ教育のマーケティング分野の特定テーマのオープンプログラムをある教授が設計すると、この教授がアカデミックディレクターとなって、他の教授陣を巻き込んでチーム組成をすることになる。
その時、収入(授業料x参加人数)から経費(アレンセンターでの諸経費+授業を持つ先生への支払い+アカデミックディレクターになった人のフィー)を引いたものが利益になるが、この利益をアレンセンターとマーケティング部門で折半する仕組みにしたのだ。
そのため、この利益が、マーケティング部門に入るので組織的にもエグゼクティブプログラムの提供が奨励されることになる。マーケティング部門では、事務スタッフを雇ったり、新しいコンピュータを買ったりするのに使えるので基本的にはエグゼクティブプログラムは歓迎なのだ。
一方、講義した教員も教えた時間数に応じて支払われ、1日で数十万円のプラスαの収入になるので結構やる気になったようだ。また、アカデミックディレクターもプログラムの日数に応じて相応のフィーがもらえ、さらに講義も担当していたらその分ももらえる、という金銭上のインセンティブがうまく組み込まれている。
これが成り立つのも高額な授業料をチャージできているからであり、その高額な授業料でも履修人数を集めることができるような魅力的なプログラム開発をするインセンティブが埋め込まれているのだ。また、その実績が本来のMBAの教授としての評価につながることもあり「このテーマは今まさにホットなので行ける!」というテーマ決めると、それをどの教員を巻き込んで提供するか、どんなカリキュラムにすれば魅力も満足度も上がるか、ということに教授たちが頭を使いたくなる仕組みを作ったということである。