イノベーションの成果をどう測定すべきか。198人のイノベーション担当幹部に聞き取りを行った結果をもとに、大企業でありがちな落とし穴を示す。

 

 大企業はネットフリックスやウーバーがもたらしたような破壊的変化の犠牲になることを恐れ、イノベーションへの投資に拍車をかけている。AIGからディズニー、イントュイットまでさまざまな業種の企業は、イノベーションチームをつくり、有望なスタートアップ企業を惹きつけるためにアクセラレーター・プログラムを立ち上げ、社員にシードマネーを提供して実際の顧客を相手に新しいアイデアを試せるようにしている。

 そうした投資が増えるなか、多くの企業はある難問に直面している。選択したイノベーション戦略が実際に実を結びつつあるかどうか、どうすればわかるのか――。

 この問いの背後には極めて現実的な不安がある。すなわち、「最高イノベーション責任者」、「社内ベンチャーキャピタリスト」、「創造の触媒役」といった新しい任務に就いた面々は、雇用主にとっての真の関心事において成果を上げていると証明できなければ、ほぼ確実にお払い箱にされると恐れているのだ。

 私がエディターを務める企業幹部向けの情報サービス「イノベーションリーダー」は2014年末、コンサルティング会社のイノサイトと共同で、イノベーションを担当する上級幹部198人にアンケート調査を実施した。その結果、回答者たちは異なる2種類の評価基準を用いていることが判明した。

 1つ目は我々が「アクティビティ指標」と呼ぶもので、これはイノベーションという船のボイラーにせっせと燃料を投入するような活動を測定する。例としては「何人の社員がリーン・スタートアップに関する研修を受けたか」、「現在検討中の新しい製品アイデアはいくつあるか」などだ。たとえば、回答者の3分の2が「開発パイプラインにあるプロジェクトの数を追跡している」と答えた。

 もう一方の評価基準は「インパクト指標」で、これはイノベーションの船が実際にどこかに動いている形跡を測定する。新規事業のマーケットシェアやコスト削減率、利益率などが例である。たとえば、回答者の間で最も広く使われていたのは「新しい製品・サービスが市場投入後の最初の数年間に生み出した収益」で、全体の69%がこのデータを収集していると答えた。

 最も一般的に利用されていた指標のトップ5は以下のとおりだ。

1.新製品によって生み出された収益
2.イノベーションのパイプラインにあるプロジェクトの数
3.ステージゲート評価(あるプロジェクトを次のステージに進めるかどうか)
4.損益やその他の財務指標への影響
5.生み出されたアイデアの数

 完璧なイノベーション指標とはどのようなものかを定義するのは難しい。アンケートの後に実施した幹部への取材から、イノベーションの評価が往々にしてうまくいかない5つの理由が浮き彫りになった。