新しい技術が生み出す期待と不安
人工知能の到来で、人の仕事が奪われる。ではどのような仕事が奪われて、どのような仕事が残るのか。この「残る仕事」を突きつめていくと、人の特性、知性の特性を考えざるを得ません。
特集ではヤフーの安宅和人さんが、人工知能が得意な領域と不得手な領域をキレイに整理してくださっています。これを見るにつけ、我々人間の知性がいかに奥深いかが分かる一方、言語化できる知性ほど機械が得意にする時代を迎えていることが分かります。
では言語化できない知性とは何か。それらは、直感、ひらめき、感性、感覚など論理で整理できない言葉で表現されてきたものです。直感や感性という言葉に苦手意識のある人も多いようですが、本来は誰もが固有のものとして持っている能力ではないでしょうか。「感性が弱い」という人は、ただ単に、これまでの生活や仕事の場面で、その発揮が求められる経験が少なかったに過ぎないのではないでしょうか。むしろ、仕事によっては直感や感性に頼ることを否定するものが多かったように思います。閉ざされていた自分の内なる声に耳を傾ければ、誰もが自分ならではの直感や感性があることを認識できるのではないでしょうか。
先日、ロボット工学者である大阪大学の石黒浩先生のお話しを聞く機会がありました。機械が人間の仕事を代替していく世界が進んでいくと、将来的に「すべての人間は哲学をすることになる」とお話しされました。科学技術の発展が、最もプリミティブな学問領域である哲学を呼び覚ますというお話しがとても示唆的です。
仕事に求められる正確性やルーティンワークの多くは機械が助けてくれる時代になる。そうなると人に求められる仕事が変わるとともに、価値の概念も変わってきます。何が新しい価値になるのか、その価値はどのように生まれるのか。それは一人ひとりの独自に考える力、哲学する力から生まれるのではないか。ビジネスを提供するのも、享受するのもすべては人間の所作です。人工知能の特集から、ビジネスの根本である人間を考えるきっかけになれば幸いです。(編集長・岩佐文夫)
◆最新号のご案内◆
『【特集】 人口知能 ‐機械といかに向き合うか‐』
■エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィ 機械は我々を幸福にするのか
■ヤフー安宅和人氏 「ヒト・モノ・カネ」から「ヒト・データ・キカイ」へ 人工知能はビジネスをどう変えるか
■人工知能研究の第一人者 松尾豊氏 ディープラーニングで日本のモノづくりは復権する ほか
ご購入はこちら![Amazon] [楽天ブックス] [e-hon]