人材開発は、研修のみではなく実際の事業活動の中でも実現できるという。挑戦しがいのある短期プロジェクトを立ち上げ、学習と収益の両方を目標に組み込むことがその要諦だ。

 

 昨今の企業とマネジャーにとって、能力開発はきわめて優先順位の高い課題である。この数年で学習プログラムへの参加は急増しており、全世界で年間700億ドルを超えるエグゼクティブ研修市場が創出されている。従業員は新しいアイデアと技術を習得するために、カンファレンスへの出席、ケーススタディやビデオによる学習、シミュレーションの実施などを上司や人事部から求められるようになった。

 当然、こうした学習は大切だが、いずれも実際の仕事とまったく同じ経験ができるわけではない。どこかの時点で専門家の話を聞くことを終え、実地の仕事を始めなければならない。そこで、「実際のプロジェクトを通して学ぶ」ことが非常に強力な学習手段となる。厳しいスケジュールの中で劇的な成果を上げたい場合は、特に有効だ。

 世界的な通信会社アスコムの人材開発プログラムを見てみよう。参加者は従来型の研修の受講に加え、重要なビジネス課題に関する100日間のプロジェクトを策定、実施する。医療分野における自社の実績向上でもよいし、携帯電話の使い勝手をよくする新しいソフトフェアの開発でもよい(これらは実際の事例だ)。

 こうしたプロジェクトは何百万ドルという利益を生むと同時に、多くのリーダーを育てることにもつながる。彼らは、大きな目標の達成に向けて、チームを奮起させる手腕を身につける。ビジネスチャンスについてどう説明すれば、チームのやる気を引き出せるかを学べ、過剰管理せずに部下をサポートする能力が高まる。また、目標達成のためにしばしば他の部門や職能との協力が求められるため、公式の権限を持たずに人々を導くスキルも磨かれる。さらに、最善のソリューションを見つけるために、安全な範囲内で「小さな、素早い失敗」をする方法も習得できる。

 プロジェクトに学習機能を組み込むプロセスは、けっして複雑ではない。以下にそのステップを挙げよう。