これほどつながり合った環境では、セカンドハンド・ストレスの悪影響を避けるために、「心の免疫システム」を強化する必要がある。以下はその方法だ。
1.ストレスの捉え方を変える
筆者の1人エイカーは、スタンフォード大学マインド&ボディ・ラボのアリア・クラム博士およびイェール大学エモーショナル・インテリジェンス・センターの創立者ピーター・サロベイとともに、金融機関UBSの投資銀行部門で実験を実施した。その結果、ストレスと戦うのをやめ、その存在を肯定的に捉えるマインドセットを持つと、ネガティブな影響が23%低減した(英語論文)。ストレスを脅威と捉えていると、そのプラスの効果を心身が享受できなくなってしまうのだ。
ストレスはどれほど高度であっても、次のような効果をもたらしうる。精神力の強化、人間関係の深化、認識力の向上、新たな視点の獲得、達成感、より前向きな人生観、意義・やりがいの感覚、優先順位をつける能力の向上、などである。
周囲にネガティブな人がいたら、戦ったりイライラしたりするのをやめてみよう。相手に同情する機会、あるいは相手がポジティブになるよう手助けする挑戦の機会と捉えるとよい(HBR.ORGの記事"Making Stress Work for You"〈未訳〉では、ストレスに対して肯定的なマインドセットを持つ他の方法も紹介している)。
2.会話をポジティブな言葉で始める
ストレスを抱えた人がもたらすネガティブな効果を、中和するための行動が必要だ。苛立っている同僚がストレスを態度に表していても、同じようなしかめ面を返すのではなく、微笑みや、理解を示す頷きを返そう。すると突然、あなたに力が宿る。
筆者の1人ギーレンが新刊Broadcasting Happiness(幸福は伝達する)で述べているように、他者と過ごす時間がネガティブな形で始まるのを避けるために、会話をポジティブな言葉で始めるという方法がある。会話の第一声は、話の流れを左右する場合が多い。電話で最初の言葉を、「もういろいろ大変で」とか「とにかく忙しいんです」などと始めることはやめよう。深呼吸して穏やかに、「話ができて嬉しい」と言ってみるとよい。
3.自己肯定感を持つ
セカンドハンド・ストレスから身を守る最も効果的な方法の1つは、自分自身をしっかり持つことである。自己肯定感が強いほど、自分はいかなる状況にも対応できるという感覚を持ちやすい。誰かの気分に影響を受けていることに気づいたら、そこで立ち止まり、事態が順調であること、何が起きても自分は対処できることを思い起こそう。自己肯定感を強めるよい方法の1つは運動である。エクササイズで何かを達成するたびに、エンドルフィンの分泌によって脳がそれを記憶するからだ。
4.予防接種をする
仕事に取りかかる前や、ストレスを感じる環境に行く前には、あらかじめ「予防接種」をしておこう。たとえば我々は、朝仕事を始める前にまず、その日に感謝すべきことを3つ思い浮かべるようにしている。
こちらのTED動画(日本語字幕あり)では、脳に予防接種をほどこし他者のネガティブな思考から身を守るために、ポジティブ心理学に基づく5つの習慣を紹介している。
1. 2分間で知人の誰かを称えるメールを書く
2. ありがたい、と感じる何かを3つ書き出す
3. 2分間でポジティブな体験を書き記す
4. 30分の有酸素運動をする
5. 2分間の瞑想をする
今日の私たちは、喫煙スペースを避けて通ることを知っているし、空港の人混みを出たら手洗いもする。しかし今後は、他者のストレスから身を守る「心の免疫システム」の強化が、健康と幸福を維持するカギだと認識するようになるだろう。
そして言うまでもなく、問題は他者のストレスばかりではない。自分自身のマインドセットが、周囲の人々の幸福を左右する。ポジティブな考え方を持つことによって、みずからの生活だけでなく他者の生活をも向上できるのである。
HBR.ORG原文:Make Yourself Immune to Secondhand Stress September 02, 2015
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ショーン・エイカー(Shawn Achor)
グッド・シンクCEO。ポジティブ心理学の第一人者。これまで50を超える国々で講義や研究を行い、顧客には多数のフォーチュン100企業のほか、NFLやNBA、米国防総省やホワイトハウスも含まれる。著書に『幸福優位7つの法則』『成功が約束される選択の法則』がある。
ミシェル・ギラン (Michelle Gielan)
インスティテュート・フォー・アプライド・ポジティブ・リサーチ創設者。著書にBroadcasting Happinessがある。