古今数多の戦略フレームワークを、どう選び活用すればよいのか。BCGの戦略エキスパートが、事業環境と戦略を「伝統型」「適応型」「形成型」「先見型」「再生型」の5体系に整理し、それぞれに応じたアプローチの選択・実践法を伝授する。
本記事は、新刊Your Strategy Needs a Strategy(HBRプレス、2015年)からの抜粋である。同書ではBCGの戦略エキスパートが、さまざまに異なり、相矛盾する戦略アプローチのすべてに整合性を与えている。あなたのビジネスにはどの戦略が適しているのか、それをいつ、どのように実行すべきなのかを示すものだ。
ここで紹介する実践的なツールは、企業幹部が抱える次のような問いにヒントを与えてくれる。計画サイクルが年度ごとでは時代に合わなくなった場合、代わりにどんな方法を取ればいいのか。どの環境、どのタイミングであれば、競争のあり方を自社に有利となるよう変えられるのか。複数の事業要素に対して異なる戦略を同時に実行するには、どうすればよいのか、である。
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巷には、競争優位の実現を謳うベストセラー本やベストプラクティスがあふれ、企業幹部は翻弄されている。しかし、これらの理論や手法には互いに矛盾するものも多い。目指すべきはスケールか、スピードなのか。ブルー・オーシャンを開拓し、適応力を高め、勝利を目指すべきなのか。それとも、持続可能な競争優位など忘れてしまったほうがよいのだろうか。事業環境の変化がますます速くなり、まさに1日ごとに不安定さと複雑さが増すなか、適切な戦略アプローチを選ぶことの重要性はいまだかつてなく高まっている。
だが、その選択がいまほど難しい時代もない。1960年代初頭に経営戦略が生まれて以降、企業リーダーが選べる戦略のツールやフレームワークの数は飛躍的に増えている(下図参照。伝統型から再生型まで、5つの類型については後述)。問題は、これらの戦略は互いにどう関連しているのか、そして採用すべき時、してはいけない時はいつなのか、である。
とはいえ、戦略を導き出す強力なアプローチがないわけではない。欠けているのは、適切な戦略を適切な状況で選択するための確固とした方法だ。ある状況ではファイブ・フォース(5つの競争要因)分析が有効かもしれないが、別の局面ではブルー・オーシャン戦略やオープン・イノベーションが有効かもしれない。しかし、これらの戦略はいずれも、それだけで万能薬であるかのように言及・認識されがちである。
経営者とビジネスリーダーはジレンマに陥っている。対応すべき環境がますます多様化し、正しい対応がいっそう切実に問われるなか、最善の事業戦略を見極めるにはどうすればよいのか。適切なフレームワークやツールを用いてそれを採用・実行するために、どのように考えて動けばいいのだろうか。
事業環境の激動と多様化という二重の課題、そして戦略の氾濫への対応策として、我々は戦略を選ぶための統合的フレームワークである「戦略パレット」を提案する。これはリーダーに次のことを可能にするために策定されている。
それは目の前の状況に見合った戦略スタイルを選び、効果的に実行すること。複数の環境あるいは変動的な環境に対応するために、異なる戦略を組み合わせること。そして、できあがった「戦略のコラージュ」に、リーダーとして命を吹き込むことだ。