成功するリーダーと
失敗するリーダーの違い

 新任マネジャーの成否を分けるものは何だろうか。これを突き止めるために、コーポレート・エグゼクティブ・ボードのラーニング・アンド・ディベロップメント・ラウンドテーブル(L&DR)は数年前、調査プロジェクトに着手した。L&DRは、大企業でリーダー人材の育成を担当するマネジャーたちのグループである。

 9人からなる調査チームは、L&DRの会員企業22社の協力を仰ぎ、新任マネジャー5400人とその上司を対象に調査を実施した。これら新任マネジャーたちは、就任後の数カ月間、何に重点を置き、どのように振る舞い、何をしたのかについて調べた。

 新任マネジャーたちには、自分のチームの全業績について評価することを、また彼ら彼女らの上司には、新任マネジャーの成績を10段階で評価することを依頼した。こうして、新しい役職になじんでいる人とうまくなじめずにもがいている人を分けるものは何か、そのパターンを探した。

 調査の結果、優れた成果を上げている新任マネジャーにおける共通点が明らかになった。それは、結果を重視していることである。実際、彼ら彼女らのほとんどが、みごと「クイック・ウィン」(就任早々に何らかの成果を上げること)を実現していた。つまり、新しい役職に就任後、ほどなく目に見える成果を上げ、組織の成功に貢献していたのである。クイック・ウィンを実現したリーダーの評点は、できなかったリーダーのそれより、平均20%近く高かった。

 もっとも、この結果は説得力があるとはいえ、驚くほどの発見ではない。実際、マネジメントの専門家たちは、「昇進したら、すぐに手柄を立てたほうがよい」とよく言う。

 新任マネジャーの上司は、「自分の人選は正しかった」と思いたい。またチーム・メンバーたちは、新しい上司が適任者なのかどうかを見極めようとする。同僚たちは、自分たちと同等の力量の持ち主なのかどうかを判断しようとする。つまり、クイック・ウィンは周囲の安心材料として不可欠なのだ。

 大した成果を上げられなかった新任マネジャーたちを調べてみると、いっそう興味深い事実が明らかになった。彼ら彼女らには、5つの問題行動、すなわち「隘路に入り込む」「批判を否定的に受け止める」「威圧的である」「拙速に結論を出す」「マイクロ・マネジメントに走る」という行動がよく見られたのである。これら5つを見れば、クイック・ウィンを実現しようと焦る新任マネジャーたちが陥りやすい罠であることがわかる。

 ここで、一つの逆説に直面する。すなわち、新任マネジャーがクイック・ウィンにがむしゃらになればなるほど、最終的にはクイック・ウィンが遠ざかってしまう──。