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コーチングは定着したが──
17世紀、ルイ13世の宰相を務めたフランス王国の政治家、リシュリュー枢機卿は、灰色の僧衣から「影の枢機卿」として知られた通称ジョセフ神父こと、フランソワ・ルクレルク・デュ・トランブレに頼り切っていた。
リシュリューと同じく、今日のビジネス・リーダーにも、お抱えの「影の腹心」がいる。しかし今日のそれは、清貧の誓いに縛られた修道士ではなく、一般に「エグゼクティブ・コーチ」と呼ばれ、なかには時給3500ドルという人もいる。
このような高給を稼ぐコーチの実態を理解するために、HBR誌は140人の一流コーチを対象にアンケート調査を実施した。そして、この道の専門家5人に、アンケート結果へのコメントを依頼した。
読めばおわかりいただけると思うが、コーチングという分野が今後どのように発展していくのか、またどうあるべきなのかについて、これら専門家たちの見解は異なる。これは、アンケート回答者の間に存在する矛盾が浮き彫りになったともいえる。
回答者たちも、また専門家たちも、この業界が成熟するには、さまざまな点でレベル・アップを図る必要があると感じているようだが、どうすればよいのかについては、総意を得るに至っていない。ただし、コーチングを必要とする理由が変わっていることには、ほぼ意見の一致を見た。
10年ほど前、上層部の有害行動を正す目的で、多くの企業がコーチを雇った。しかし今日では、有望な人材の能力開発がコーチングの主たる役割と考えられている。
このように役割が拡大した結果、あいまいな部分が出てきた。たとえば、コーチはどこまで関わるべきなのか、どのように進捗を測定し、また報告するのか、どのようにコーチを選ぶべきかといった点である。
はたして企業やリーダーたちは、コーチングの恩恵にあずかっているのだろうか。コーチたちに、コーチング業界が順調に発展している理由を説明してほしいと尋ねてみると、顧客が何度も依頼してくれるのは、「コーチングが役に立っているからである」という答えが返ってきた。