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女性リーダーは「構想力」に欠けるのか
産業界には、いまだ女性への偏見がくすぶっており、とりわけリーダーシップを評価する際に、この傾向が強く表れる──。
我々は先頃、この仮定が本当なのかどうか、すなわち女性は男性よりも低く評価されているのかを確かめるために、INSEADのエグゼクティブ・プログラムが過去5年間に収集した数千件に上る360度評価のデータを分析した。
驚いたことに、その結果は正反対だった。リーダーシップ項目のほとんどにおいて、女性のほうが男性よりも高い評価を得ていたのである。ただし、一項目だけ例外があった。構想力、つまりビジネスチャンスやトレンドを察知し、戦略の新たな方向性を指し示すという重要な能力において、女性は男性に劣るというのだ。
この結果は、単なる主観によるものなのか。それとも現実を映し出しているのか。女性のリーダーシップにどれくらい重要なものなのか。「ビジョナリーではない」とされた人は、どうすればこの能力を獲得できるのか等々──。
女性リーダーたちの協力を得て、これらのテーマを掘り下げていったところ、「女性リーダーは、はたして『ビジョンを描くことに優れている』という評価を望んでいるのだろうか」という新たな問いが持ち上がった。
我々は何人もの女性リーダーにインタビューしたが、その代表格ともいえる存在がいる。指折りのサービス企業のCEOで、ここでは仮にアン・デュマと呼ぶことにする。
デュマのリーダーシップ・スタイルは、その座右の銘「いつも細部に目を配る」に端的に表れている。この教えは、20年前に最初の上司から授けられたものだという。
「事業の中身を知り、市場、お客様、サプライヤーに影響を及ぼすものは何かを理解すれば、おのずと戦略は見えてくるでしょう。ただし、大所高所の視点だけでなく、細部についての理解も必要です。また、自分の目で確かめない限り、洞察は得られません。もちろん、すべてに目配りすることはできないとはいえ、自社がどのような仕組みで動いているのか、知ることはできるはずです。その際、すべてを監視するのではなく、いまどうなっているのかについてもれなく理解するのです。さもないと、社内政治に足をすくわれてしまいます。十分な情報が得られないのはまだしも、隠れた課題に気づかないのは最悪です。私の仕事は、要となる細部に目を向けることです」