企業はある程度の成長段階へ入ると、多くの規定や手続きが増えがちで、硬直化した組織へと変わりやすい。最終回では、いかにして「学び続ける組織」を作るのかを考える。
凋落する組織の共通項

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東出浩教(ひがしで・ひろのり)。
東出浩教(ひがしで・ひろのり)。
早稲田大学ビジネススクール教授。慶應義塾大学経済学部卒業。鹿島建設に入社し、建設JVのマネジメント・欧州での不動産投資の実務に従事。その後ロンドン大学インペリアルカレッジ修士課程修了(MBA)。2000年に同カレッジよりEntrepreneurshipを専攻した日本人初のPh.D.を授与される。
起業、創造プロセス、ビジネス倫理と哲学等が現在の主たる研究対象。ベンチャー学会副会長、各種公的委員会、東京商工会議所産業人材育成委員会ダイバーシティ推進専門委員会座長を務めるなど、学内外で幅広く活動している。
“Fail faster, succeed sooner”これは「いろいろなことを試しながら、早めに多くの(致命的でない)失敗をし、結果を振り返りながらプロジェクトを進めていけば、結果として早く成功できる」と解釈できる。クリエイティブなデザイン・プロセスで有名なIDEOの創業者である、デイビット・ケリーが有名にした言葉である。
失敗を許容し、企業としての「学習」を継続していく組織を作ることなしに、不確実性を糧にして生き残ることはできない。しかし、多くの組織は硬直化し、失敗を避ける“エラー・フリー”な経営を目指してしまう。
簡単な2つのチェック法がある。「いいアイディアなんだけど、でも…」「面白いけど、うちの仕事ではないよね…」「これまでやったことがない取り組みだから…」「無理だよ。うまくいくはずがない」など、やらない理由やできない理由を探す人や組織は硬直化する。また、自社や部署の業績が悪くなると、「この為替レートではしょうがない…」「こんなに公共事業が削減されては…」などと、人のせい、外部要因のせいと、自分以外の何かに責任を転嫁する人や組織は凋落していく。中・長期的に安定した業績を達成していく組織は、良いニュースも悪いニュースも、そもそもの原因は自分たちの決断の結果であり、これまでを振り返り、より良い決断をしていこうと考え行動する。