硬直化した組織への道程
図表1のラリー・グレーナーの企業成長モデル(注1)をみると、ゼロから立ち上がったビジネスが、どのような経緯と課題を経験して成長していくのかがわかる。それぞれの成長段階に応じて、異なった「推進力」を使うが、結果として、次の段階を目指すために、乗り越える課題(6つの折れ線部)に直面する。多くのビジネスは、第4段階終盤で、階層の増加と官僚的組織の弊害が目立つ「Red Tape」と言われる状況になる。多くの規定や手続きに従うことが必要な、形式的な組織に変わり、「機械のような」学ぶことができない組織の限界が露呈する。
危機を乗り越えるためには、学びながら成長する組織への変革が必要である。学ぶことなしに、不確実な環境で規模・成長を維持しながらも、企業文化は起業家的であり続ける、という2つの両立は難しい。
「しなやかに」学び続ける組織へ
しかし、硬直化してしまった組織を、しなやかに学び続ける組織に戻すことは容易ではない。一方で、組織をダメにすることは実に易しい。ヘンリー・ミンツバーグも、豊かな企業文化を、いとも簡単に壊し、硬直化させるための「処方箋」を提示している(注2)。(1)ビジネスの仕組みを丁寧に見つめることなく、お金を上手に管理すればお金は儲かると考えること、(2)すべての行動を“計画”立て、予定通りに進めていこうとし、自発的に考え行動することを抑制すること、(3)従業員を“人間”として捉えず、機械の部品のように入れ替えることができる物のようにみなし経営すること、などである。
起業家的な組織とは、一人ひとりが個人としてクリエイティブな潜在能力を発揮しながら、組織として、動き続ける不確実な外部環境に呼応し、学び続け、変わり続けていくことができる組織である。ミンツバーグのリストを反面教師とすれば、起業家的組織を作るためには、経営者のみならず、すべての利害関係者が「人間というものを中心に据えた経営」を目指し、機械のような組織を、「人間的な組織」に変革していかなくてはならないことが明らかになる。