厳しくタフな仕事論
――今回のタイトル『好きなようにしてください』は、さまざまな捉えられ方をされそうです。
僕は、『好きなようにしてください』っていうタイトルの語感は、わりと投げやり。「好きにしろよ」みたいなね(笑)「自分らしくあればいい」という風にも聞こえるかもしれないですが、そうじゃないんですよ。
「好きなようにしてください」という言葉は、実際はすごくきついことを言っているんです。僕は、仕事に対してはわりと厳しい前提を持っています。仕事は趣味とは違います。趣味であれば徹頭徹尾自分を向いていればいい。しかし、自分以外の誰かのためになってこその仕事です。人に貢献できないこと、対価が支払われないことをいくらやっても、それは仕事ではない。好きなようにするっていうのは、好きなことじゃないと人は仕事で貢献できるほど上手くなりようがないと思っているからなんです。
嫌いなことをやってうまくいかないことほど、嫌なことはないですよね。だから最初ぐらいは好きなようにしましょうよ、と考えているんです。仕事の最初の起点には「好きなようにしてください」がある。けれど、そのあとはもう自己評価には意味がない。世の中の荒波が、その人の評価を勝手に決めていきます。という、わりと厳しい主張なんです。
――確かに、本のなかでも甘やかしたような論調では回答されていません。
これまでの自分自身を振り返っても。「ま、なかなか簡単にはいかねえな……」という思いがありますね。世の中で思い通りになることはほとんどない。ただね、仕事というのは、誰も頼んでないんです。何をやるかを人に決められていたら、本当に苦しいと思うんですけどね。今の時代はそうではない。仕事の根幹を支える原理原則は自由意思です。そのことを忘れてはいけない。
――選択肢は自分のほうにあるということですね。
『好きなようにしてください』と、一見、相田みつを風で、実は……
――厳しい。
ようするに、世の中甘いもんじゃない、ということですね。僕がいうのもちょっとアレですけど(笑)。そう簡単にはうまくいかない。どうせうまくいかないなら、キャリアの起点というか原点は「好きなことをする」に越したことはないというのが僕の考えです。
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『好きなようにしてください たった一つの「仕事」の原則』
楠木 建 著
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