(4) 融合
対等合併で、両者が完全なパートナーシップのもと、新たな企業組織を作るパターンである。両社のブランドは捨てられ、新たなブランドが創られる。両社の組織も一度解体された上で新たな組織として組成される。世界規模のコンサルティング企業同士の合併などで見られるパターンだが、事例は少ない。
組織統合においてGBLが果たす役割
いくつかの組織統合のパターンにおけるGBLの役割を見ていこうと思う。海外でのM&Aの場合、買収先の(2)「表面的独立維持」が最終ゴールならば、それを成功に導くリーダー人材は、先に紹介したマルチドメスティック企業で必要とされる“グローバルコーディネーター型”人材である。なぜなら、「表面的独立維持」とマルチドメスティック企業は権限委譲型の組織形態という点で、非常に似通っているからだ。このような組織形態では、バランス感覚があり、外交官役もお目付役もできる日本人のグローバルコーディネーター型リーダーが必要となる。
一方、買収先の(3)「統合」が最終ゴールならば、それを成功させることができるリーダーは、グローバル企業で必要な本社籍の“グローバルインプリメンター型”のリーダー人材である。なぜなら、「統合」型のM&Aとグローバル企業は経営統合型の組織形態だからである。
日本企業のこれまでの海外M&A案件を見ると、多くのケースは(2)「表面的独立維持」を経て(3)「統合」を最終ゴールとしているように思われる。グローバル組織の形態でいうと、マルチドメスティック企業からグローバル企業へと着実に組織形態を転換させていくことを狙っているように見える。社員や顧客の離反を最小限に抑えつつも、買われた会社の社員に対して理念教育やアイデンティティシフトを行い、組織を統合していくプロセスは、社内コミュニケーションだけでは達成できない。それらを押し進めるリーダーの存在が絶対不可欠である。
仮に買収先の(2)「表面的独立維持」から(3)「統合」にシフトさせていくのが目標だとすると、最初の「表面的独立維持」の段階では、まず“グローバルコーディネーター型”リーダーが親会社の外交官として、買われた会社の幹部への影響力を増し、抵抗勢力の中性化、離反者の回避を行う役割を果たす。
その後、“グローバルインプリメンター型”リーダーにしっかりとバトンを渡し、彼らは、経営統合に向けて自らが部下に背中を見せて現場を引っ張っていく中で、買われた会社の社員に理念を伝え、彼らのアイデンティティをシフトさせていくのである。海外M&Aの場合も、最終的にどのような統合を目標にするのかを決めた上で、それに合ったGBLを選び、任に当てることで成功の確率が上がるだろう。