最初の調査対象にふさわしいと思われた企業は、ジェットブルー航空だ。同社はJ.D.パワーの顧客満足度調査で、LCC部門のトップに11年連続で輝いている。その成功の一端は、ソーシャル・レコグニションへの注力にあると思われる。

 グローボフォースはジェットブルーのために、社員同士で称え合うプログラムを開発した。模範的な仕事・努力や何らかの貢献をした同僚(およびリーダーやチーム)を指名・推薦できる仕組みだ。その成功談は社内のニュースフィードで全社に共有され、受賞者にはポイントが付与される。ポイントの使い方は自分で選ぶことができ、すぐ商品券に換えて食事に使ってもよいし、旅行やクルージングなどの各種オプション用に貯めておくことも可能だ。

 このプログラムの興味深い点をいくつか紹介しよう。

●受賞者自身でポイントの使い方を選べるため、プラットフォームへの参加意欲が高まる。そして個々人に選択の自由を与えることで、ビーガン(完全菜食主義者)に報奨としてステーキのディナーが提供されたり、耳の聞こえない社員にiPodが贈られたりという問題を回避できる(どちらも実際に起こった表彰制度の失敗例だ)。

●報奨には選択の幅があるため、受賞者は自分にとって有益なものを選んで交換できる。

●表彰内容が全社で共有されるため、受賞者は投稿を見た多くの社員たちから祝福を受ける。そのうえ、ポジティブな行動に関するエピソードは他の社員にとってよき手本となる。

●「P2P」、つまり社員同士で褒め合う制度なので、業績考課とは異なり、純粋な感謝の気持ちを表しやすくなる。

●単なる昇給ではなく、リアルタイムの表彰で報いることには素晴らしい利点がある。昇給されればその金額が心理的に固定され、満足度は頭打ちとなってしまうかもしれない。しかしソーシャル・レコグニションには継続性と意外性があるため、そうなりにくい。

 ジェットブルーのデータによると、表彰者の人数が10%増えるごとに、社員の定着率が3%、エンゲージメントが2%向上していた。

 社員の離職は、企業にとって最も金銭的損失の大きい問題になりえる。諸研究によれば、1件の離職・補充にかかるコストは、計算の方法次第で給料の20%から150%に及ぶ。そのため定着率が3%上がれば、会社の規模によっては数千万ドルもの効果に相当するのだ。

 さらに、ジェットブルーのデータによれば、意欲の高い乗務員はそうでない人に比べ、顧客を感動させる確率が3倍高い。そして顧客に称賛される回数でも、上位10%に入る確率が2倍である。したがって、表彰は社員の定着率だけでなく、顧客の満足度とロイヤルティにも影響を及ぼすのだ。

 なお、前述したジェットブルーのエンゲージメント2%向上という数字は、他の事例と比べれば目立たないほうだ。シマンテックがグローボフォースのソーシャル・レコグニション・プログラムを実施したところ、従業員エンゲージメントのスコアは14%も向上している(英語サイト)。