表彰プラグラムを費用対効果の見地から分析すると、社員の定着率、エンゲージメント、顧客ロイヤルティの向上による財務的な効果が大きいことは明らかだ。それを裏付けるものとして、グローボフォースがフォーチュン500に名を連ねる別の業界トップ企業と協働した事例がある。基本給のアップと表彰機会の増加、それぞれが従業員エンゲージメントにどう効果を及ぼすかを検証した。

 小額の昇給と、表彰制度への投資を比較したところ、エンゲージメント向上への効果は後者が前者の半分であったが、そのコストは前者のわずか5%であった。換言すると、表彰はエンゲージメント向上の半分を実現できる一方で、かかるコストは昇給に比べて95%も少ないのだ。

 ただし注意すべきは、表彰制度をしかるべき昇給の代替にしてはならないということだ。両方を併用することで効果を発揮する。あらゆる会社が、いい仕事をした平均的な社員の給料を上げられれば、それに越したことはない。しかし、会社の資金は無尽蔵ではなく、多くの会社は株主の監視下にあるため、投資に見合う効果が問われる。従業員が正当に評価・称賛されていない今日では、表彰制度はなおさら重要だ。

 1度の昇給による幸福感と、デジタル称賛システムがもたらすような高頻度・内発的な幸福感は、どちらがどの程度持続するのか。私は現在この問題を、インスティテュート・フォー・アプライド・ポジティブ・リサーチに所属する妻のミッシェル・ギーレンおよびエイミー・ブランクソンと共同で研究している。

 我々の仮説はこうだ。1度昇給するだけでは、その給与水準はやがて「当たり前」と感じられるようになり、意欲の向上は長続きしない。したがって、同じレベルの意欲を維持するには、再び昇給する必要がある。この仮説は、内発的/外発的動機に関する過去のHBR記事"Does Money Really Affect Motivation?"とも一致する(英語記事)。一方、社員同士が褒め合うプログラムは継続的に行われるため、意欲のレベルが元に戻ってしまうことは起こりにくい。

 企業が成長と拡大を続け、テクノロジーが進化し続けるにつれ、職場でも私生活でも助け合いのネットワークは分裂していくばかりだ。デジタル革命は仕事のスピードを劇的に速めているが、本記事で述べた研究は、デジタルが人々を再ふたたび結びつけるカギとなりえることを示唆している。

 さらなる成功と幸福を目指してチームを導く人々は、その過程で称賛を必要としている。彼らが享受すべき、効果的で内発的な称賛を仲間同士で与え合うシステムを、テクノロジーによって生み出せるのだ。


HBR.ORG原文:The Benefits of Peer-to-Peer Praise at Work February 19, 2016

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ショーン・エイカー(Shawn Achor)
グッド・シンクCEO。ポジティブ心理学の第一人者。これまで50を超える国々で講義や研究を行い、顧客には多数のフォーチュン100企業のほか、NFLやNBA、米国防総省やホワイトハウスも含まれる。著書に『幸福優位7つの法則』『成功が約束される選択の法則』がある。