優れたアプリで大規模な労働力を管理する、米ウーバー。だがドライバーの業務体験を調査したところ、同社が謳う「自由、柔軟、自立を特長とする働き方」とは一致しない実状が見えてきた。


 2009年の創業以来、ウーバーの労働力は飛躍的に拡大し続けている。米国内では40万人、世界全体では110万人のドライバーが、ウーバーのプラットフォームで稼働中だ(米公式ウェブサイトより)。

 同社は大規模で分散的な労働力を「ドライバーパートナー」として管理し、ある程度標準化された乗車体験を客に提供する。同時に、ドライバーを「独立起業家」と標榜し、働き方は自由、柔軟、自立が特長であるとしている。

 体験の標準化に努める一方で、ドライバーに真の自立を与える――そこに生まれる齟齬が、2件の訴訟に表れている。

 1件目は、カリフォルニア州でウーバーのドライバーたちが起こした集団訴訟、「オコナー対ウーバーテクノロジーズ」だ。ドライバーが正社員ではなく独立契約者として雇われているのは不当である、という訴えである(訳注:その後和解が成立。最大1億ドルの和解金と引き換えに、独立契約者としての雇用形態は継続)。

 裁判でのウーバーの主張によれば、同社のビジネスモデルは、乗客とドライバーを仲介するソフトウェアの使用許諾によって成り立っているという。

 2件目はより最近の訴訟、「メイヤー対カラニック」だ。その申し立てによれば、ウーバーがアルゴリズムを使って価格を設定する行為は、反トラスト法に違反するという。原告はウーバーの乗客であり、こう主張する。ドライバーは独立契約者であるから、本来ならば互いに独自の価格を設定して競争しなくてはならない。しかしウーバーのCEOトラビス・カラニックがやっているのは、ドライバーとの共謀による、アルゴリズムを用いた価格操作である(需要急騰時に料金を割増する「サージ・プライシング」など)。

 ウーバーはこの主張には根拠がないとしているが、マンハッタン地裁のジェド・レイコフ判事は先頃、訴訟の棄却を求めるカラニックの申し立てを却下した。

 これらの事例は、次の点について理解を深める必要性を強く物語っている。プラットフォーム事業はどのように管理運営されているのか。そして、半自動化され、アルゴリズムに支えられたマネジメントシステムのなかで、業務はどのように形成されているのか。

 私は2015年、米ウーバーにおけるドライバーとプラットフォームの関わり方について、ニューヨーク大学のルーク・スタークと共同で9カ月にわたり調査を行った(英語論文)。具体的には、まずオンライン上でドライバーが集まる複数のフォーラムを分析した。ここでは何万人ものドライバーが、アドバイスを共有したり、ウーバーのシステムに関する体験や問題について情報を交換したりする。

 我々はさらに、7人のドライバーに詳細なインタビューを行い、オンデマンド経済での職務体験がどんなものかを探った。

 その結果、次のことが明らかになった。ウーバーは、そのアプリの設計と配備を通して、良識ある人が見れば多くが「管理された労働力」と定義するであろうものを、生み出していたのである。