4人が絵に込めた思い

「リズム」「宇宙」「繊細さ」「出発」「エネルギー」「弾ける」「生まれる」「未来」。

 ほかの3人からこうイメージをされたのは笠原さんです。

「経営戦略を立案するという仕事柄、『着眼大局』『着手小局』が仕事をするうえで大切にしていることです。グループにはいろいろな人がいて、いろいろな部署があって、いろいろな仕事がある。だから、全体を見たうえで個に入っていくことが大事。それを表現するには、宇宙が最適だと思いました」

 笠原さんは、宇宙を会社や組織に見立てます。

「その中には、さまざまな個性を持った星があります。その星も、遠くから見れば一点の光に見えますが、近くで見るとさまざまな色、形があり、衰えていたり、活発だったり、いろいろなことが起きています。常に破壊が繰り返される一方、常に新しい誕生も起こっています。私たちの組織、会社、社会もそうであってほしい。そんな願いも込めて描きました」

 多様性、複雑さ、多面性を念頭に置いて描き始めたという笠原さん。

「でも、描いているうちに常に新しいものが生まれることが大事だという考えが強くなっていきました。そこで、タイトルは『誕生』にしました」

「バランス」「自然の流れ」「衰退と躍動」「ミックス」「異なる世界」「発熱」。

 こうイメージされたのは笹森さんです。

「大きくても小さくても、一つの思いを最後まで貫くという意味で『一気通貫』が仕事をするうえで大切にしていることです。その思いを絵に描こうとしました」

 描こうとした。笹森さんはそう言いました。しかし。

「直線的な絵になるのかなと思って、もう一度自分の感情を考えてみました。すると、渦のようなものが頭に浮かんできたのです。渦を巻きながら上に上がり、その間に色も変わっていく。でありながらも最後まで思いを貫いていく。そんな激しいものがイメージできたのです」

 そのイメージに沿って描き進めた笹森さん。そのなかで、ある言葉が浮かんだそうです。

「情熱と冷静です。一気通貫で上っていくには、そのバランスが大切だと思いました。だからタイトルも『情熱と冷静』にしました」

「集約と拡散」「明るい未来」「道のり」「光を求める」「信じる力」「照らす存在」。

 これは竹内さんの絵に対する皆さんからの感想です。

「百貨店は、一人ではなくチームで成果を出す仕事なので、さまざまな個性や能力を束ねることでパワーが生まれる。それが仕事をするうえで大切にしていることであり、この絵で表現したかったことです」

 そのため、竹内さんはすべてのパステルを使ったといいます。

「それが一人ひとりの個性で、個性が集まり、束になることによって生まれたパワーによって閃光が発するというイメージですね」

 ただ、少し後悔があるといいます。

「その光に照らされた社会は、僕の絵ほど暗くないと思いました。濃いブルーの画用紙を選んだのは、もしかしたら失敗だったかもしれませんね」

 竹内さんの後悔はまだ続きます。

「光を発する山が、ほかにいくつもあってよかったかもしれません。実際、仕事はそのように動いていますからね。タイトルは『束ねるとパワー』にしました」

 最後は大西さんです。

「アンバランス+アンバランス=バランス」「複雑」「優しさと厳しさ」「絡み合う思い」。

 ほかにいくつもの印象が出されましたが、それを聞いた大西さんの口から最初に発せられたのは、こんな言葉でした。

「ぜんぶ、読まれていますね(笑)」

 大西さんが仕事をするうえで大切にしているのは「個性」「人間性」「イノベーション」だといいます。

「人間にはいろいろな性格があります。一本の道を、段階を踏みながら歩いていく人。途中はみだしながらも、最終的には同じところに到達する人。それぞれがあっていいし、それぞれが大事だということを描きたかったのですが、どうやらそうはならなかったみたいですね」

 そんなことはないと思いますよ。

「これからの時代は、はみ出した人たちがいないと企業は立ち行かなくなる。それが最も表現したいことだったんですけどね」

 少し自信のなさそうな大西さん。大西さんのインタビューを収録したDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー7月号をあわせてご覧いただければ、大西さんの思いがさらに深くおわかりいただけると思います。