あなたの会社でデジタル変革を検討するようになったら、以下の3つの問いを自問するとよい。
1.自社の現在の事業は何か?
この質問に対して、技術分野、製品・サービス、業種などで答えてはいけない。自社が顧客のために解決している課題は何か。専門的な言い方をすれば、「自社が顧客のために果たしている用事」を定義するのだ。コダックならば、それは「化学フィルム」か「画像処理」か「瞬間の共有」なのか、という違いである。
2.破壊的変化によって、どんな新しいチャンスが生じるのか?
弊社イノサイトの取締役会相談役クラーク・ギルバートは、10年以上も前にHBR論文で、破壊的変化の大いなる皮肉について説明している(「破壊的イノベーションを事業化させる法」)。それは、破壊は脅威と見なされるが、実際には成長の大きなチャンスでもあるということだ。
破壊によって市場は常に拡大するが、同時にビジネスモデルの変革も促される。ギルバートの研究によると、破壊を脅威とのみ見なす経営者は防御的な反応を示しがちな一方、チャンスとのみ捉える経営者はおおらかに構えてしまうという(危機意識の欠如、様子見の姿勢などのため)。
3.そのチャンスを掴むには、どんな組織能力が必要なのか?
もう1つの大いなる皮肉は、既存企業こそ破壊によるチャンスを最も掴みやすい立場にあることだ。結局のところ、そうした企業は新規参入者が必死に追い求めているものを多数持ち合わせている。市場へのアクセス、技術力、健全なバランスシートなどである。
もちろん、それらの組織能力は制約にもなりうる。そしてほとんど常に、新しい市場において新しいやり方で競争するには不十分だ。新たな成長を追求するには、相応の謙虚さが必要となる。
コダックの事例は、可能性が失われた悲劇として語り継がれるだろう。米国を代表する存在であったこの企業は、才能、資金、そして変革への先見の明も兼ね備えていた。にもかかわらず、破壊的変化の余波の犠牲者となってしまった。
この事例から正しい教訓を学べば、同じ轍を踏まずに済むはずだ。
HBR.org原文:Kodak’s Downfall Wasn’t About Technology, July 15, 2016.
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