ある企業が、特定の選択肢からなる販売をてこ入れしたいとしよう。ターゲット顧客が主に男性で、複数人が共同決定を行うと予想できるならば、その製品・サービスを中庸よりも極端な性質のものにするほうがよい。

 たとえば2人の男性がともに映画を観るときは、極端なもの(純然たるコメディや純然たるアドベンチャーなど)を選ぶ可能性が高い。したがって男性客が多い場合は、そのような映画を極端な選択肢に位置づけることが非常に効果的なはずだ。

 対照的に、女性のペアはその中間、コメディとアドベンチャー両方の要素があるような映画を選ぶかもしれない。さらに、女性客が多いと予想される場合、映画館は妥協効果を利用して売上アップを図れる。たとえばポップコーンやドリンクのSサイズをなくし、MとLに加えてXLサイズを販売すれば、中間のLサイズを買う女性が増えるかもしれない。

 職場で優秀なチームの編成を託されたマネジャーも、この知見を活用できそうだ。もし会社が思い切った決定をもっと促進したいのなら、男性だけの意思決定チームをつくれば、個々人に頼るよりも実現しやすいかもしれない。

 たとえば、1人で仕事をするファンドマネジャーは、リスクとリターンのバランスを取った投資ポートフォリオを組むとする。男性2人がペアになれば、よりハイリスク・ハイリターンの極端なポートフォリオを組む可能性が高い。

 それゆえ、逆に中庸の選択肢が考慮されるよう万全を期したい場合は、マネジャーはそれを言葉にしなくても、意思決定プロセスに女性を増やすか、単独で決定させればよい。そうすれば男性は、妥協的な行動を提案しても他の男性から責められずに済む。

 我々の研究結果はまた、男性と女性では交渉に対するアプローチが大きく異なることも示唆している。たとえば、賃金交渉を一種の共同決定と考えてみよう。2人の人間が1つの結果で合意しなければならない。その場にいる両方が男性の場合、極端に高い数字と低い数字からスタートして、妥協点を見出すまで苦労する可能性が高い。対照的に女性は、自分が妥当だと思う数字から始めようとする。ただし、もっと思い切った金額から切り出そうと考えないがゆえに、損をすることもありうる。

 こういった場合、男性も女性もまず自分の傾向を自覚し、行動の根拠をしっかり考える必要がある。「この交渉相手ならば、中庸/極端のほうがやりやすい」という理由だけで、立場を最初からどちらかに固定するのは得策ではないのである。


HBR.ORG原文:Men Choose Differently When They Choose with Other Men September 14, 2016

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クリスティーナ・ニコロバ(Hristina Nikolova)
ボストン・カレッジのキャロル経営大学院コーグリン150周年記念マーケティング講座助教。

ケイト・ランバートン(Cait Lamberton)
ピッツバーグ大学ジョセフ・M・キャッツ経営大学院の准教授。マーケティングを担当。