実験室環境での一連のフォローアップ実験で、上記のような振る舞いの理由が判明した。それは反証的フィードバックによって、自分のスキルや業績に関する自身の見解が脅かされるためである。

 実験の1つで、総勢300人を超える学部生と大学院生に短時間で終わる一連の課題を与え、「もう1人のパートナーと一緒に取り組む」ものとした(実際には、この「パートナー」は実験者がコンピュータで操作している。実験はオンラインで行うため、相手の顔は見えない)。

 最初の課題は、独創的なショートストーリーの創作だ。ストーリー完成後、それを基準にして自身の独創性を10段階で自己評価してもらった。数分後、参加者は「パートナー」から独創性評価のフィードバックを受け取った。そのスコアは、参加者の自己評価よりも2ポイント高い(確証的)か、または2ポイント低い(反証的)。これを受け、参加者はフィードバックを脅威と感じたか否かを表明した。

 次に、参加者に雑学クイズの課題を与え、作業指示書でこう説明した。「あなたとパートナーが全問正解すれば、ボーナスが得られます。そして、先ほどペアを組んだ同じ相手と引き続き協力するか、あるいは今回のクイズでは別の参加者とペアを組むか、あなたは選択できます」

 その結果、参加者が反証的なフィードバックの提供者との協力を選ぶ確率は、確証的なフィードバックの提供者に比べて低かった。相手の厳しい評価は自己像を脅かす、と受け止めたからだ。反証的フィードバックを受けた参加者の28%が、雑学クイズでは新しいパートナーとペアを組むことを選んだ。一方、確証的フィードバックを受けた人が相手を変えた割合は、わずか7%だった。

 こうした行動は、パフォーマンスに悪影響を及ぼす。前述の食品製造・農業関連会社での調査では、業績連動型の年次ボーナスのデータを入手した。それを分析した結果、反証的な評価をくれた同僚との関係を放棄した社員は、翌年の業績が低下する傾向にあったのである。

 また、確証的評価を欲してつながりの薄い同僚との関係づくりに傾倒した社員も、それを自制した社員に比べて翌年の業績が振るわなかった。

 これは驚くにはあたらない。我々や他の人々の諸研究結果によれば、人は自分の資質、性格や振る舞いについて、長所ばかりを見て短所を無視する傾向がある。つまり、みずからのパフォーマンスを自分ではうまく評価できないのだ。このことは代償を伴う。なぜなら弱点や短所を自覚することは、自分を向上させるために否応なく不可欠だからである。

 本研究が示す教訓は明白だ。仕事面で向上したいと本気で望むならば、厳しいフィードバックを厭わず提供してくれる相手と、関係を築き育む必要がある。このことを忘れてはならない。


HBR.ORG原文:Research: We Drop People Who Give Us Critical Feedback September 16, 2016

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フランチェスカ・ジーノ(Francesca Gino)
ハーバード・ビジネススクール教授。経営管理論を担当。ハーバード・ケネディ・スクールの行動インサイトグループのメンバーも務める。著書に『失敗は「そこ」からはじまる』(ダイヤモンド社)がある。