アクセンチュアが14ヵ国1770人のマネジャーを対象に、人工知能(AI)の台頭に関する意識調査を実施。そこから示唆される、AI時代に必要な5つのマネジメント慣行とは何か。


 人工知能(AI)のテクノロジーが労働力を一変させる可能性については、多くの警鐘が鳴らされている。自動化が容易な仕事に関しては、特にその懸念が強い。あらゆる階層のマネジャーが、スマートマシンの世界への適応を余儀なくされる。事実、人工知能はこれから、マネジャーが多くの時間を割いている管理業務を、より迅速・的確・安価に代替できるようになるだろう。

 現場の管理者から最高経営幹部までを含め、マネジャーはどうすればAI時代で成功できるだろうか。我々アクセンチュアはその答えを見出すため、14ヵ国1770人のマネジャーにアンケート調査を行い、さらに組織のデジタル変革を担う幹部37人にインタビューした(英語報告書)。このデータを基に、マネジャーが成功するために習得すべき5つの慣行を特定した。

1.管理業務をAIに任せる

 調査によれば、全レベルのマネジャーが、運営上の調整・管理に時間の半分以上を費やしている(たとえば、典型的な店舗マネジャーや養護施設の看護師長は、スタッフの病気や休暇、急な退出などに応じて、常にシフトのスケジュールを調整しなければならない)。回答者らは、AIによってこうした任務が最も変わるだろうと期待している。そして、彼らは正しい。AIはこれらの業務の多くを自動化するだろう。

 報告書の作成も、自動化される管理業務のよい例だ。AP通信はAI搭載のソフトウェアロボットの力を借りて、企業の四半期決算に関する記事の数を約300から4400に増やしている。これによって同社の記者たちは、より調査と説明を要する報道に従事できるようになった。

 このようなテクノロジーが、自分のマネジメント報告書を作成すると想像していただきたい。実際、一部の分析報告書については、すでにそれが可能となっている。データアナリティクス企業のタブロー(Tableau)は最近、シカゴを拠点に自然言語生成ツールを提供するナラティブ・サイエンスとの提携を発表した。協業から生まれた無料のクローム拡張機能「Narratives for Tableau」は、タブローの図表に対する説明文を自動的に作成する。

 調査対象のマネジャーたちは、このような変化を前向きにとらえていた。86%が、モニタリングや報告でAIによる支援を望むと回答している。

2.判断を下す仕事に集中する

 多くの意思決定事項には、人工知能がデータのみから取り出せるものを超越した、人間の洞察が必要とされる。マネジャーは、組織の歴史や文化に関する自身の知識に加え、共感や倫理的思考も用いる。これが「人間による判断」の真髄だ。経験と専門知識を、ビジネスの重要な意思決定や慣行に適用するということだ。

 我々が調査したマネジャーたちは、この方向へのシフトを意識している。「今後の成功に最も必要となる新たなスキル」として彼らが4つ選んだ中で、3つが判断力を軸とするものだ。「創造的な思考と実験」「データの分析と解釈」「戦略の策定」である。

 米海軍のIT部門でERP(基幹系システム)業務を統括するレイン・トンプソンは、我々にこう語った。「マネジャーはたいてい、自分の仕事は単に規則を適用することではなく、判断、裁量、経験、機転が必要だと考えています。機械学習の有望な可能性の1つが『意思決定を補助する能力』ならば、テクノロジーはマネジャーに取って代わるものではなく、助けになるものと考えるべきです」

3.インテリジェント機器を「仕事仲間」として扱う

 AIを同僚に近い存在だと考えているマネジャーであれば、「機械との競争」は必要ないとわかるはずだ。人間の判断そのものが自動化される可能性は低いものの、インテリジェント機器は多大な貢献ができる。意思決定の支援、データに基づくシミュレーション、探索と発見などである。実際、回答者の78%は、ビジネス上の決定を下すうえで、今後はインテリジェントシステムのアドバイスを信頼しようと考えている。

 これらを好機としている企業の1つが、次世代型の金融アナリティクスを提供するケンショー・テクノロジーズ(Kensho Technologies)だ。投資マネジャーは同社のシステムを使えば、投資関連の質問を平易な英語で質問することができる。たとえば、「利上げの前後3ヵ月では、どの部門と業界が最も好調か」という質問をすると、数分でその回答を得られる。マネジャーや彼らのチームが意思決定の影響やシナリオを検討するうえで、このようなテクノロジーはどれほど助けになることだろう。

 AIはマネジャーの仕事力を増強するだけではない。会話やその他の直感的なインターフェースを通じて、マネジャーとインテリジェント機器との協働的なやり取りを可能にする。AIはいつでもそばにいるアシスタント兼アドバイザーとなるだろう。