「ひっくり返すのは、報告内容が枝葉の議論に終始していて、肝心なプロジェクトの幹がぶれている時。どんなにアイデアが進んでいても、若手で盛り上がっていても、軸がぶれているものは得ずひっくり返します」。そう言うのは、大手企業の役員Eさんだ。Eさんは、プロジェクトが始まる時にプロジェクトリーダーに「本質ペーパー」を1枚にまとめてもらい、プロジェクトの軸を確認し合うそうだ。そして、その範囲から大きく外れない限りはリーダーを信頼して任せている。

 また、別の大手企業役員のFさんによれば、プロジェクトスタートの時に最も注目するのが、プロジェクトの「難所」だという。プロジェクトの計画書には「◯◯億円を目指す」「◯◯とコラボレーションする」「3年後には○○業界でシェア1位になる」など、景気の良い言葉ばかりが並ぶことが多い。しかし、そこに疑いの目を向けるのが役員の視点だ。そもそも、何らかの理由があって実現できていないことだからこそわざわざプロジェクト形式にして取り組むのである。すべてのプロジェクトには、実現を妨げる「難所」があるはずだ。その「難所」の特定と、難所を乗り越えるための仕掛けがあるか、をプロジェクトリーダーには期待するという。つまり、プロジェクトリーダーはその難所を越える力を持っているかが見られているのだ。

役員もまた、
経営チームのメンバーの一員である

 もう一つ、プロジェクトリーダーが誤解していることがある。それは、役員も「経営チームの一人」だということだ。プロジェクトリーダーは役員を1人の決裁者として見ることが多い。確かに役員は何らかの分野のトップではあるが、同時に経営メンバーの1人としてチームで動いている。役員もまたチームメンバーなのだ。先述のE役員は、プロジェクト報告を聞く時には、自分以外の役員、例えば財務担当者役員に電話で3分話してプロジェクト実行のための予算が確保できるかという視点で聞いているという。経営チームの一員として、他の役員を納得させられるシンプルで強いストーリーを作らなくてはいけないのが役員だ。ところが、そのような役員の心情を考えずに、とにかく役員本人をなんとか説得させようとするプロジェクトリーダーが多い。プロジェクトリーダーにとって役員とは単に報告する相手ではなく、プロジェクトを成功へと導くための経営レベルでの協働者である、と考えることが必要だ。