本連載では、プロジェクトを推進するリーダーのファシリテーション能力に焦点を当てて論じている。前回は、プロジェクトメンバーの「感情のファシリテーション」の重要性について取り上げた。今回は、プロジェクトリーダーがいかにして経営層と対峙するかをテーマに、ファシリテーション型リーダーシップ講座の講師を務める筆者が論じる。
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プロジェクトの「軸」と「難所」に気をつけろ

 プロジェクトリーダーの仕事は、チームを活性化するだけではない。プロジェクトの成果や課題をまとめて、プロジェクトオーナーに報告しなくてはならない。全社的なプロジェクトの場合、社長や役員がプロジェクトオーナーとなり、プロジェクトリーダーが現場と経営層の橋渡し役となることが多い。

 ところで、各社のプロジェクトリーダー達が集まって共通の悩みを話すと、かなりの確率で「役員にひっくり返された」経験を話す人がいる。よく聞くエピソードは、次のようなものだ。ある日、役員からプロジェクトリーダーに指名されたものの、部門の壁が厚く会議の雰囲気も重苦しい。ようやく若手を中心に活発に議論できるようになってきたので、盛り上がったアイデアをまとめて報告書を作成して役員に中間報告を行った。アイデアが広がって褒められるか思いきや、「そもそもが間違っている」とプロジェクトの前提条件の違いを指摘される。さらにはその役員の持論を長々と聞かされて、「腹案があるなら先に言ってくれよ!」と怒りがこみ上げてくる。結局、役員が思う通りの内容に修正せざるを得なかった。

 このケースでは、プロジェクトリーダー側にも役員側にも問題があるのだろう。しかし、役員の賛同を得て、経営層を巻き込みながらプロジェクトを推進することも「プロジェクトファシリテーション」の重要なスキルである。また、性格が悪くてわざとひっくり返してくる役員は別だが、役員の指摘が正しい面もあるはずだ。ではなぜ役員はプロジェクトをひっくりかえすのか。「ファシリテーション型リーダーシップ講座」の中で、大手企業の役員をゲストに招いて聞いてみた。